傷だらけ二年生が友人に囲まれるまで (ページ18)

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「テル、テル！」

ゆらりと鏡から出て来た人影
行きとは違う古めかしい黒い服を着たテルだ
出て来た、とは言えないかもしれない
どちらかと言えば鏡に向かって前のめりに倒れて来たような形だった
リドルが支えなければそのまま床に伏していただろう

「おい、おいテル！しっかりしろ！」
「意識ある！？大丈夫！？」

リドルに続いてトレイとケイトも駆け寄った
仰向けになるように降ろして体を揺する
首がかくんと傾く
それでもテルは何か反応することは無い

「う、あ」
「テル、返事をするんだ！テル！」
「あ、え、あ…？」

虚空を見るその目は周りの誰にも向かなかった
声は出ているが言葉にはならない
聞こえるのは呻き声だけ
必死に声をかけ続けるリドルの手に白い布が当たる
包帯が擦り切れたようにボロボロなって辛うじて引っかかっていた
普段隠れていたその下は酷く大きな火傷の跡が覆っている
隠れていなかった方の頬には青あざ
額は血は出ていないものの何かで殴られたような赤い腫れ
手を見れば爪が数枚無い
何をしたらここまで人を怪我させられるのか
そう思わせられる状態だ

「すぐ医務室に運ぶぞ。ケイト、ヴィルとルークに連絡を」
「分かった！」
「リドル、俺たちが落ち着くしかない、医務室に行こう」
「う、うん…！」
「俺が背負っていくからリドルはテルの荷物を頼む、行くぞ」

トレイがテルの怪我を気にかけながら背負う
腹や背中も痛めているのか「う"…」と苦しそうな声を出していた
呼吸の方もだんだんと早くなっていく

「あ、う、あ"あ"…」
「ああ悪い！痛かったな、すぐ手当してもらおうな」
「テル。もう大丈夫だよ、僕たちが居るからね」

なるべく声をかけ続けて落ち着かせる
背中で暴れたら傷が悪化してしまう
トレイだって怪我をするかもしれない

「ごめん、怪我人！怪我人が居るからちょっと退いてね！」

急ぐ二人の前をケイトが先に行って道を開けていく
医務室のドアを跳ね開けて中に入ると保険医が目を丸くして驚いていた

「先生、怪我人です！お願いします！」

切羽詰まったリドルの声に保険医が迅速に手当の道具を用意し始める
トレイは背中のテルをそっとベッドに降ろした
力無く横たわる痛々しい姿にリドルの目から思わず涙があふれてしまう

「リドルくん、泣かないで。テルくんのこと支えないと、ね？」
「…うん、もちろん」

ごしごしと涙を拭ってテルの手を握る
何をされたのか丸い火傷跡が残るその手がリドルの手を握り返すことは無かった