傷だらけ二年生が友人に囲まれるまで (ページ16)

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どうしよう、どうすれば良い
リドルの頭の中はその言葉で埋まっていた
目の前ではテルが困り顔をしている

「そ、その、良いのかい？それは」
「…仕方ないよ」
「やっぱり帰るべきじゃないよ、先生から言ってもらえば何とかなるかも知れない」
「駄目、帰らなきゃ退学だって言われた」

覚悟を決めたようなテルの顔にリドルは「でも…」と呟く
だがその続きは上手く言葉に出来なかった
発端は放課後、何やら思いつめた顔のテルの話から始まった
内容は明日から一週間、実家に帰るというもの
親戚の女性が亡くなってしまったからその葬儀に、との呼び出しだ
テルとは面識が無くて存在も関係も知らなかった相手だという
実家はその地域では名が知れているらしく葬儀も盛大
だから少しでも参列者がいるらしい
それだけではリドルも止めやしない
だがテルが実家に帰るのは不安だ
ただでさえテルには両親から酷い扱いを受けている疑惑がある
いや、疑惑どころか確信できるレベルだろう
それなのに黙って見送る訳にはいかない
実家の見栄のために帰ってテルが嫌な思いをするなんて納得できない

「大丈夫、怖いけど一週間だから」
「一週間は君が傷つくのに充分な期間じゃないか、大丈夫じゃないよ」
「大丈夫。…大丈夫って言わせてよ」
「…ごめん」

笑おうとして失敗した顔と震え声でテルは返す
リドルはそれを否定するなんてできなかった
きっと誰よりも本人が大丈夫なんかじゃないのを分かっている
それでも自分ではどうしようもないから言うしか無い
リドルとしても気持ちは痛いほどに分かってしまう

「…テル、なら約束しよう」
「約束？」
「うん、毎日寝る前に連絡して欲しい。一日でなにがあったのかを」
「リドルくんに日記を送るみたいなので良いの？」
「そう。僕の連絡先に日記を付けるんだ、出来るかい？」
「う、うん、分かった。忘れないようにするね」

せめて安否やどんな状況か伝えて欲しい
そう思ったリドルの提案にテルは今日初めての笑みを浮かべた
リドルとしては割と真剣な案だった
しかしテルには楽しそうなものに思えたらしい
小さな、嬉しそうな声で「日記、初めて」と続けていた
ほんの少しでも気が紛れたのなら良いかとリドルはそれを見守る

「僕はあの花に水をやることを、テルは日記を送ることを約束しよう」
「うん、そうだね。そっちも約束したいな」

植物園の花の事だって忘れてはいけない
それだけでも手助けしたいというリドルにテルは心底嬉しそうにしていた