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「入りなさい」

ドアから聞こえたノックにヴィルは短く答える
中に入ってきたのは笑顔のルークと緊張しているテル
2人を交互に見てヴィルは自分の対面の椅子を示した

「座ってちょうだい。ルークはどうせ隅でしょう?」
「ああ、さすがだヴィル」
「は、はい」

ルークが部屋の隅に置かれた椅子に移動する
同時にテルも遠慮がちに座った
ルークが隅に行きたがるのはいつもの事
来客やヴィルの様子がよく見えるからと言っていた
最初は呆れたヴィルも慣れてしまってもうそこに椅子を置いている

「ちょっと確かめたい事があって呼んだの、じっとしてて」
「はい…」

ヴィルが立ち上がって近づくとテルは身を縮めた
顔は俯き、明らかに怖がっている
膝の上で握りしめた手もかたかた震えていた
当然傷つけようと呼んだ訳じゃない

「ちょっと顔を見せて。引っ叩いたりしないから安心なさい」

一応声をかけてからテルの頬を触る
ああ、やっぱりそうだった
思わずため息が出てしまう

「アンタ、やっぱり寝てないでしょう」
「え」
「肌荒れが酷いわ、隈も前より濃いじゃない」

ヴィルの思った通り
髪も手入れされてない、顔色は不健康に青白い
見かけるたびに酷くなる隈にもしやと思っていた
予想は的中
恐らくまともに寝ていない
食事もルークの調べによれば異常な少なさ
本格的な手直しが必要だった

「夜遅くまで起きてると思ったらアンタ不眠気味だったのね、まったく…」
「え、あ、ご、ごめんなさい」
「ちょっと動かないで、今からケアするんだから」
「テルくん、ヴィルに任せると良い。悪いようにはされないさ」

不満を言いつつヴィルはポーチからスキンヘア用品を出していく
困惑しているテルを置いてけぼりにして用意が進む
ハーツラビュル寮の一件の時はまじまじと見ていなかった
とにかく落ち着かせて休ませるのが最優先
ケアなんかは頭の片隅にすら無かった
それをヴィルは不覚に思っている
磨けば光る、飾れば美しくなると見込んでいた
なのに放っておいたなんて、と自分に呆れている

「包帯は取れる?ちょっと邪魔なのだけれど…」
「い、いや、嫌です、取れません…!」
「少しは傷が薄くなる可能性もあるわ、それでも嫌?」
「嫌です、見せたくないです、こんなの」
「…なら今は良いわ」

無理やりはぎ取っても良くない
一旦は諦める事にする
包帯の無い顔の左半分の手入れを進めるとした
頬に触れるたびにぎゅっと目を瞑られる
それに胸が痛んだがヴィルは気づかない事にした

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共喰い@誰か・・・私に宿題の答えを・・・・(プロフ) - な、なんだこの神作品は・・・!更新頑張って下さい! (8月10日 19時) (レス) @page1 id: 6f0674a1a0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:とことこ | 作成日時:2023年7月14日 19時

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