傷だらけ二年生が友人に囲まれるまで (ページ2)

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「リドル、玄関にお客だぞ」
「ああ、ありがとう」

ドア越しのトレイの声にリドルは読んでいた本を置いて立ち上がる
部屋を出ようとドアを開けるとトレイが微笑んで立っていた
その顔が小さな子どもを見るようなものに見えてリドルは少しだけ不服そうにする

「こらこらリドル、友達が来ているのにむくれるんじゃない」
「誰のせいだと…まあ、今は気にしない事にするよ。迎えに行ってくる」
「ああ」

子ども扱いされているのを気のせいという事にしてリドルは寮の玄関に向かう
心なしか早足で行くと柱の影できょろきょろと周りを見ている来客を見つけた
階段の踊り場から「テル」と呼びかける
腕章の紫色と赤色を除くとほとんど白黒で統一された相手はリドルを見ると顔を綻ばせた

「リドル君、良かった、場所間違ってたらどうしようかと」
「幾らキミでもさすがに鏡で迷う事は無いんじゃないかな…」
「そこに行くまでが大変だったりするんだよ」
「まったくキミは…ほら、案内するよ。行こう」

楽しそうについてくるテルを確認してリドルは歩き始める
初の会話をした日以降、リドルは何かとテルを気にかけた
ペアを組む授業では自分から声をかけ昼食時にはなるべく近くに座って話しかける
方向音痴で目を離せば迷子になるのが難点だが穏やかな彼とは案外気は合う
自分でもどうして彼を気にかけているのかは分からない
リドル自身でも気づいていない理由があるのだろうか
それでも確実にテルとの交友関係は続いていた
親しい後輩たちには雰囲気が柔らかくなったと言われたが何かと交流するオンボロ寮の後輩とテルの存在が大きいだろう

「よし、じゃあどうぞ」
「お邪魔します」

部屋に着いたリドルはドアを開けてテルを迎え入れた
中を見たテルは「わあ」と呟いて辺りを見回す
何となく子どもっぽい仕草に思わずくすっと笑いが漏れた

「綺麗なお部屋だね、リドル君は片付け上手だなあ」
「一応、こまめに掃除はしているつもりだよ。いまお茶を淹れるよ、座っていて」
「やった、失礼しまーす」

椅子に腰かけるテルを横目にティーポットを手に取る
中に入った温かい紅茶から良い香りが漂っていた
リドルは今日、初めてテルを部屋に招いた
小さな頃に密かに『家に友達を呼んで遊ぶ』という夢を抱いていた
ここは家では無いがそういった試みをしてみたくなったのだった
お茶をしたらチェスをしたい
テルは嫌がらないだろうか
そう考えながら置かれたカップにお茶を注いだ