傷だらけ二年生が友人に囲まれるまで (ページ1)

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リドルのオーバーブロットの一件後
その生徒とリドルが知り合ったのは放課後になったばかりの教室だった
教室を出て部活動に向かおうとしているリドルの背後から「あの」と声がしたのが始まりだ

「ねえ、えっと、ローズハート君？だよね」
「そうだけれど…。君は確かテル・メルゴートだね」
「うん、そう。ねえ、体調は大丈夫なの？オーバーブロットしたって聞いたからちょっと心配で」
「ああ、そうだったのかい。問題ないよ、心配ありがとう」
「良かった…あ、ごめんね、邪魔して」
「いや。…それより、キミも大丈夫なのかい？随分と包帯だらけだね」

リドルの体調を案じる相手は名前をテル・メルゴートという
今まで話したことがあるかは怪しいが同じクラスではあるのでリドルとしても顔と名前くらいは一致する
腰に届くほどの長い黒髪に鈍い銀色の目、ポムフィオーレ寮の腕章に違わず整った顔立ち
目立つタイプでは無いが充分に美人と言える人物だろう
しかしその顔は右半分を前髪で隠し、隙間からは巻かれた包帯が見えている
手も手のひらの中央辺りまで包帯で覆い、首元すらも同じような状態
左足は怪我をしているのか不自由なのか引きずっているようにすら見えた
どこからどう見ても重傷人
だが本人は「ああ」と笑顔を浮かべてから言葉を続ける

「大丈夫、これ古い傷を隠してるだけなんだ。今は全然平気だよ」
「そう、かい…失礼なことを言ったようで申し訳ないね、事故か何かなのかい？」
「あー…ううん、いや、ぼく、昔からドジでさ、転んだだけ」
「転んだだけって…」
「大丈夫だよ、大丈夫。こちらこそ心配ありがとうね」

どうみても転んだだけには見えない
そう言いかけたリドルを遮って「じゃあ、またね」とテルは横をすり抜けて行った
足を引きずりながら去っていく後ろ姿にそう言えば彼の姿をよく見たことが無いことに気づく
授業後はすぐにふらりと出て行く
背が高いので席は後ろの方になりがちで飛行術も隅で練習している
言い方は少し悪いが影が薄いのだろう
振り返ってみればその時までクラスメイトと仲良く、とちゃんと考えてみたことが無かった
ペアなんてわざわざ人を選ばなくて良いし寮でもトレイとケイトが居れば困らなかった
せっかく接点を持った、というより向こうから話しかけに来てくれた
これを機に少しは気を払ってみよう
ポムフィオーレ寮の包帯男と半分小ばかにした呼び名があるテル
彼はその時からリドルが友人関係を見直す切っ掛けの一つとなった