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そらるside




俺の選択が正しかったのかと問われれば、その正誤を答えられる者は俺を含め誰も居ないだろう。

目の前に広がる現実を頭では分かっていても全部受け入れるなんて出来やしなかった。それ程までに一瞬の出来事で、心が追い付く程の余裕は無かった。

ただ、俺が選択した事への責任と覚悟はあるのかと問われれば、俺は迷いなくYESと答える。



「そらるさん、正直まだ混乱してるんですけど、Aはあのままじゃ絶対に助からない状態だったんですよね?」



近くへと来ていた天月が、彼にしては珍しく少し声を震わせてそう尋ねる。その瞳は縋るような、蔑むような、彼の複雑な感情を映していた。

こうなるのも仕方の無いことだ。説明する義務が俺にはあるし、此処に居ない人達ほど理解し難い現実だろう。

一呼吸置いて、口を開く。



「助からない状態だったと俺は判断した。でも、実際は分からない。もしかしたら吸血鬼にならなくてもAは生き永らえたかもしれない。」



きっと、お前が欲しかったのはこんな曖昧な答えじゃないだろう。

自分自身を納得させる為にも、絶対に助からない状態だったと断言して欲しいのだろう。

だが、実際のところなんて誰にも分からないし、起こらなかった現実は想像でしか語れない。

そして、そう断言しないことが俺自身への戒めにもなるのだ。俺にはひとつしか選択肢が無かったという逃げ道を塞ぎ、無数の選択肢の中から俺が選択した結果だと言い聞かせる為でもあった。

天月は賢い、だから俺の言いたいことも分かっている筈だ。
まあ今は気持ちが追い付かないのも分かるから、仕方の無いことだけれど。

眉間に皺を寄せた天月を真っ直ぐ見つめ、言葉を続ける。



「もしAが吸血鬼になって生き延びることを望まないのであれば、責任を持って俺がAの命を止める。他の誰でも無い、俺がやる。それが俺が選択したことへの覚悟だ。」



「、、彼女が望むなら、僕がその役を引き受けますよ」



「いいや、お前じゃダメだ。この役だけは譲れない。俺がやるべきなんだ。」



隊長という肩書きを背負っている者として、感情を露わにして意地になるのは恥ずかしい事なのかもしれない。それでもこれだけは譲れなかった。

Aが吸血鬼化で暴走した時、俺は迷った。

隊長としての選択と、俺個人としての選択、どちらを優先すべきか分からず天月を頼る結果になった。


でも今は違う、


もう迷いは無かった。




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vt4966cjdf(プロフ) - すごく面白いです!!更新頑張ってください😤 (5月26日 21時) (レス) @page15 id: 48ea68b868 (このIDを非表示/違反報告)
べあ - 吸血鬼になるとは想像つかなかったです…展開が読めなくて毎話わくわくしながら読んでます! (2023年1月20日 9時) (レス) @page15 id: b2e7b104f0 (このIDを非表示/違反報告)
とこ(プロフ) - わたあめさん» ありがとうございます!そのお言葉だけで励みになります。ゆっくり更新ですがよろしくお願いします、! (2023年1月16日 0時) (レス) @page14 id: f32dc7a6dd (このIDを非表示/違反報告)
わたあめ - どのお話もめっちゃ面白くて毎回楽しく読ませていただいています...!これからも更新頑張ってください!! (2023年1月14日 10時) (レス) @page13 id: da5fff30a0 (このIDを非表示/違反報告)
とこ(プロフ) - べあさん» そう言っていただけて嬉しいです、ありがとうございます! (2022年12月4日 9時) (レス) id: f32dc7a6dd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:とこ | 作成日時:2022年9月21日 23時

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