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そらるside
何が最善かを必死に頭の中で考える。俺の目的は勿論此奴等を倒すことだ。でも、今は状況が状況である。Aの命と吸血鬼の討伐を天秤にかけるならば、間違いなく彼女の命を優先するべきだ。
それは俺が部下である仲間に何度も言ってきた教えであり、全員が望んでいることでもある。
仲間の生命を何より優先に、
「天月、此処は頼んだ」
「任せて下さい、元よりそのつもりなんで。」
お互いに視線を合わせることは無いが、考えていることは一緒だと、そう感じた。
「それに、」と言葉を続ける彼に、視線はun:cさんに向けたまま耳だけ傾ける。
「それは僕の台詞です。そらるさん、Aのこと宜しく頼みますよ」
天月も彼女の奪還を望んでいる。
短く返事を返しun:cさんの奥に視線を移動した。シルバーアッシュの髪を揺らす吸血鬼に、抱えられている彼女を救うべく脚に力を込める。
銃を握り、すかさず吸血鬼の足元に1発撃ち込む。
まあ、これは当たらないだろうことを前提に撃っている様なものだ。そして案の定銃弾に反応するun:cさん。奥の吸血鬼は眉ひとつ動かすことなく笑みを浮かべて立っている。
しかし、反応したun:cさんを天月がそのままにする訳が無い。
邪魔するように彼に切りかかる天月を横目に、もう1発銃弾を鳴らす。
一瞬だった。彼女を抱えている吸血鬼は2発の弾丸を、目にも止まらぬ速さで薙ぎ払う。腕は動いていない様に見えた。どうやって攻撃を防いだのか、。赤髪戦で随分体力を消耗したらしい。今の俺には何が起こったのか全く分からなかった。
俺の予想では、隣にいる茶髪の吸血鬼が手を出してくると思っていたが、予想は外れた様だ。人間好きで戦闘を好まないのは理解しているが、自分達のトップが攻撃されて過剰に反応するun:cさんとは大違いである。
「も〜煩いな〜、Aが音が鳴る度に顔しかめてるやん、」
まるで赤子を宥めるかのように彼女を優しく見つめながら、抱えている手でポンポンと一定のリズムを刻む此奴を見ると反吐が出そうになる。
成程、まふまふがあそこまでイラつかされたのも、必死になったのも、今なら少し分かる気がする。
此奴の一挙一動全てが癇に障るのだ。
なんと言うか、Aがこの吸血鬼に懐いている前提で話を進めているというか、。
最早思い込みが行き過ぎて狂気にまで感じる。
吸血鬼の腕の中で抱えられている彼女の表情は恐怖に染まっており、
その瞳に光は宿していなかった。
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とこ(プロフ) - こゆきさん» 嬉しいです、ありがとうございます!遅くなり申し訳ないです、続編もよろしくお願いします。 (2022年9月22日 11時) (レス) @page50 id: f32dc7a6dd (このIDを非表示/違反報告)
とこ(プロフ) - ばななさん» わざわざログインして頂き、嬉しいです、!ありがとうございます。遅くなりましたが、続編もよろしくお願いします。 (2022年9月22日 10時) (レス) id: f32dc7a6dd (このIDを非表示/違反報告)
とこ(プロフ) - ちょこさん» ありがとうございます、お待たせしてすみませんでした、。 (2022年9月22日 10時) (レス) id: f32dc7a6dd (このIDを非表示/違反報告)
こゆき(プロフ) - 続編待ってます… (2022年8月6日 23時) (レス) @page50 id: b05dbfc063 (このIDを非表示/違反報告)
こゆき(プロフ) - めちゃくちゃ面白い!!!普通にハマったw (2022年4月27日 17時) (レス) @page50 id: 405c20d148 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:とこ | 作成日時:2021年6月6日 17時