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出来るか分からない。でも今の状況では、やるしかないのだ。
『すーちゃん、もっと血をあげるから、もっと強くなって。お願い、』
自分の手を切ろうとしたその時、私の言葉に反応したのか、刃に口が現れる。
今まで見たことのなかった光景に思わず驚いていると、刃がぐにゃんと曲がって私の手首に噛み付いた。
2本の牙がズプリと肌を突き破る感覚に、思わず顔を歪める。ジュルっと、血を吸う音が聞こえた。
次の瞬間、さっきまで剣だったソレは大鎌に変形した。
「えー!何それ何それ!すっげえ!」
めいちゃんという吸血鬼が目をキラキラさせながら驚いており、それと同じくらい私も驚いている。
やっと少しは意思疎通出来たと嬉しくなる。しかし、今は喜んでいる場合ではない。
皮肉混じりに敵を見つめる。
『アンタ達と同じ、吸血鬼だよ。』
「へぇー、その武器が生きてるってこと?人間はよく考えるね、凄い!」
『アンタに褒められたって嬉しくないんだけど、』
「もー!そんな事言わないで!それにしても、そんな武器があるってことは一筋縄じゃ行かないかぁ、」
眉間に皺を寄せながら悪態をつく私に対して、感情表現が豊かな吸血鬼は、腰から剣を引き抜いた。
やはり情けなく私の脈は速くなるし、手も少し震える。今は前とは違うからと、自分に言い聞かせた。
『頼むよ、』
大鎌を使ったことなんて無いが、何故か今は使える気がした。上手く言えないのだけれど、すーちゃんと共鳴している感じがするのだ。
両手で振り回すと、ブオンっと風を切った。めいちゃんは軽々と後ろに飛んで一旦距離をとる。
「出来れば傷付けたくないけど、まあ仕方ないよねっ!」
そう言いながら一気に距離を詰めてくる吸血鬼に、一瞬反応が遅れる。慌てて大鎌を振るも、軽々と剣で弾かれた。
その反動で自分も跳ね返され、屋上から落ちそうになる。この高さから落ちても、着地さえ出来れば何ら問題は無いのだが、今は一分一秒が惜しい戦闘の真最中だ。
大鎌の刃を引っ掛けて、自分に引き寄せる。その反動で屋上に再び戻った。
「nqrseが言ってたよりも全然やるじゃーん!」
めいちゃんはそう言いながら二パッと笑った。
余裕そうなその態度が癪に障る。
オマケに上から目線のその台詞も気に食わない。
イライラしている自分を落ち着かせる為に、再び深く息を吸った。
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とこ(プロフ) - こゆきさん» 嬉しいです、ありがとうございます!遅くなり申し訳ないです、続編もよろしくお願いします。 (2022年9月22日 11時) (レス) @page50 id: f32dc7a6dd (このIDを非表示/違反報告)
とこ(プロフ) - ばななさん» わざわざログインして頂き、嬉しいです、!ありがとうございます。遅くなりましたが、続編もよろしくお願いします。 (2022年9月22日 10時) (レス) id: f32dc7a6dd (このIDを非表示/違反報告)
とこ(プロフ) - ちょこさん» ありがとうございます、お待たせしてすみませんでした、。 (2022年9月22日 10時) (レス) id: f32dc7a6dd (このIDを非表示/違反報告)
こゆき(プロフ) - 続編待ってます… (2022年8月6日 23時) (レス) @page50 id: b05dbfc063 (このIDを非表示/違反報告)
こゆき(プロフ) - めちゃくちゃ面白い!!!普通にハマったw (2022年4月27日 17時) (レス) @page50 id: 405c20d148 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:とこ | 作成日時:2021年6月6日 17時