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まふまふside
Aが坂田とセンラくんと話している時も、彼女とそらるさんの会話を思い出していた。
彼等が同じ孤児院出身で仲が良いのも知っているし、彼女の世界を変えたのがそらるさんだとも知っている。知っているけれど、僕が実際に見ていたのは隊長と部下の関係における2人だった。
だから実際に目の当たりにして、頭がついて行かないのだ。
僕がそらるさんを超えなければ彼女は僕を見てくれない。ずっと、そんな簡単な答えに気が付かないフリをしていた。何処かでそらるさんを越すのは無理だと思っている自分がいるからだ。
それは強さだけでは無い。彼が持ち合わせている強い気持ちもだ。僕は弱い。彼女の一挙一動に気分を浮き沈みさせるし、すぐに彼女の反応を求める。
そんな僕には、到底そらるさんを越すなんて出来っこないのだ。
気が付くと、僕とAの2人になっていて。
彼女の気まずそうな声を聞いて、そらるさんだったらこんな風に彼女に気を遣わせたりなんかしないのに。と思った。
パッと笑顔を浮かべながら何事も無かったかのように明るく振る舞う。何だ、僕もやれば出来るじゃないか、
彼女が凄いよと褒めてくれるのが嬉しくて、こんなことで喜ぶなんて単純だと思うが、嬉しさを隠すことなんて出来なかった。
ベット脇の椅子に座って、彼女と改めて目を合わせた時、ドクン、と心臓が大きく脈打った。吸血鬼化している時に彼女を餌として見ていたことを思い出したのだ。
今は勿論吸血鬼じゃない僕なんだけれど、吸血鬼化しているのも僕で。吸血鬼化とか人間とか関係なく、僕が彼女をそう認識したと言うことなの、?
、、分からない、。
『どうしたの?』
彼女の心配そうな優しい声に酷く安心して、つい口を滑らしてしまいたくなる。全て話して、そんな風に見てしまったことをごめんね、と謝りたい。そうしたらきっと彼女は、いいよ大丈夫って許してくれる。僕の心も楽になるに違いない。
、、、でも、甘えたくない。変わらなきゃいけない。
そうしなければ、僕は永遠にそらるさんに追い付くことすら叶わないのだ。
ニコッと笑って、「何でもないよ」と口にした。
そんな僕とは対照的に彼女の表情が少し曇った気がして、キョトンとしてしまう。
「まだ身体辛いの?」
『え?あー、うん、そうかも。少し横になろうかな、』
横になった彼女にそっと布団を掛けてあげる。
彼女の表情は、晴れないままだった。
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とこ(プロフ) - こゆきさん» 嬉しいです、ありがとうございます!遅くなり申し訳ないです、続編もよろしくお願いします。 (2022年9月22日 11時) (レス) @page50 id: f32dc7a6dd (このIDを非表示/違反報告)
とこ(プロフ) - ばななさん» わざわざログインして頂き、嬉しいです、!ありがとうございます。遅くなりましたが、続編もよろしくお願いします。 (2022年9月22日 10時) (レス) id: f32dc7a6dd (このIDを非表示/違反報告)
とこ(プロフ) - ちょこさん» ありがとうございます、お待たせしてすみませんでした、。 (2022年9月22日 10時) (レス) id: f32dc7a6dd (このIDを非表示/違反報告)
こゆき(プロフ) - 続編待ってます… (2022年8月6日 23時) (レス) @page50 id: b05dbfc063 (このIDを非表示/違反報告)
こゆき(プロフ) - めちゃくちゃ面白い!!!普通にハマったw (2022年4月27日 17時) (レス) @page50 id: 405c20d148 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:とこ | 作成日時:2021年6月6日 17時