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少なくとも今は頼って貰えている様な気がして、彼の為に私にできることがあるのならしてあげたいと思った。
『私ね、多分暴走してた時だと思うんだけど、懐かしい夢を見てた気がするんだよね。』
「孤児院の時の夢?」
『うん、私泣き虫だったじゃん。怖い夢見る度にそらるが慰めてくれてさ、』
内容までは思い出せないけれど、よく同じ夢を見ていた。その夢を見た後の恐怖感だけは覚えている。
『私の居場所は此処にしかないって思った。それは今も変わらないし、沢山の仲間が出来て私の居場所は更に広がった、』
当時の何も無い私にとって、彼は私の全てだった。
彼は静かに私の話に耳を傾けている様で、私をじっと見つめている。
『本当に言葉で言い表せない程、沢山感謝してるんだよ。
それにね、そらるは何でも出来るし、いつも私の前を走ってるから、追いかけるのに必死、。』
そう、私は彼に追いて行かれないようについて行くので精一杯だ。私にしか使えない武器があるとしても、使いこなせなければ意味は無い。
それに比べて彼はいつ如何なる時も完璧だ。
それは勿論、努力あってのものだとは思うけれど。
『いつも完璧な人にだって、時には上手くいかないことがあって当然だよ。誰だって完璧じゃない、って教えてくれたのはそらるでしょ?』
きっと彼は此処にいる限り、そらるとしてでは無く、隊長としての意見を持ち続けなければならない。隊長としての立場も保たなければならない。
いくら天月くんが優等生だとしても、自分ではどうすることも出来なかったことを難なくやってのけた彼に対して、隊長としての立場がないと思っているのだろう。
『隊長として1番大事なのは、人の上に立つ力とか判断力だと私は思う。いくら強くても、力だけで人をまとめることは出来ないよ、』
私の言葉だけでは上手く伝えることが出来ないと思う。それでもどうにか伝えたくて、ただ正直に思っていることを全て彼に伝える。
彼が優しく微笑んだ。
「敵わないな、Aの前だと時々隊長じゃなくなる、」
柔らかい笑みを浮かべた彼を見て、やっと笑ってくれたと安心する。
彼を元気付けられるか自信は無かったのだけれど、良かった。
私も微笑み返す。
『隊長だけど、そらるはそらるだから、私の前でくらい弱音吐いたって良いんだよ。』
頼ってばかりだった私が、やっと彼にも頼って貰える様になったのかもしれないと、そう思った。
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とこ(プロフ) - こゆきさん» 嬉しいです、ありがとうございます!遅くなり申し訳ないです、続編もよろしくお願いします。 (2022年9月22日 11時) (レス) @page50 id: f32dc7a6dd (このIDを非表示/違反報告)
とこ(プロフ) - ばななさん» わざわざログインして頂き、嬉しいです、!ありがとうございます。遅くなりましたが、続編もよろしくお願いします。 (2022年9月22日 10時) (レス) id: f32dc7a6dd (このIDを非表示/違反報告)
とこ(プロフ) - ちょこさん» ありがとうございます、お待たせしてすみませんでした、。 (2022年9月22日 10時) (レス) id: f32dc7a6dd (このIDを非表示/違反報告)
こゆき(プロフ) - 続編待ってます… (2022年8月6日 23時) (レス) @page50 id: b05dbfc063 (このIDを非表示/違反報告)
こゆき(プロフ) - めちゃくちゃ面白い!!!普通にハマったw (2022年4月27日 17時) (レス) @page50 id: 405c20d148 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:とこ | 作成日時:2021年6月6日 17時