・ ページ16
・
「A、俺が昨日言いかけてた話あっただろ？」
まふが出て行ったことで静かになっていた部屋にうらたさんの声が響いた。
『はい。』
「俺が赤髪の奴と出くわした時に女を探してるって言われたんだよ。そん時は既に一発食らってた坂田を抱えて逃げることに必死で、深くは聞けなかった。Aのことかと思ったけど確証は無いし、Aに伝えるべきかどうかずっと悩んでた。」
強い奴等が戦場に姿を現し出した目的は人間に負けそうだからとかそう言うことではなく、もしかすると私なのかもしれない。
となるとあの日坂田は私のせいで怪我をしたと言うことになる。彼も戦闘が好きだから一週間も出動させて貰えなくてキツかったに違いない。私のせいだ。
うらたさんは既に私が狙われていることに少し勘づいていたとなると、隊長には元々相談していた可能性が高い。
「だから強え奴居たら気をつけろって言おうと思ってた。でもお前のことだし、自分のせいで坂田が傷ついたって責任負うと思って。」
今正にそう考えていたところだったので、ドキリと心臓が跳ねる。
「悩むくらいなら言っとけば良かったな。でも無事に帰って来てくれて本当良かった。」
『っ、うらたさん、。』
「じゃ、俺そろそろ飯の時間だし行くわ、後でな。」
救護室からうらたさんが出て行ってドアを閉めた。
彼は私が戦場に行く前から言おうとしていたから話してくれたのであって、無理に私に隠してることを言わせようとしていた訳では無い。分かってる。
だけど彼は言い難いことも打ち明けてくれているのに、私は隠したままで良いのだろうか。
仲間に隠し事なんてしていいのだろうか。
チクリと胸が痛んだ。
家族すら居ない私達にとってこの7人は家族以上の存在である。誰より信頼しているし誰より大好きだ。
自分が戦場に出れなくなるのが嫌だからという我儘で情報共有をしなくていい訳が無い。
迷惑を掛けたくないと言いながら情報を隠すことは、後々迷惑を掛ける結果に繋がる可能性だってあるのだ。
なんて自分勝手なんだろう。
チームワークが重要なのに、。
私は仲間に迷惑を掛ける勇気が無い。
信頼している人に隠し事を作った時点で、信頼しているとは言えなくなってしまうと言うのに。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 466人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
とこ(プロフ) - 七星さん» そんな風に言って頂けて嬉しいです、ありがとうございます！続編もよろしくお願いします (2021年6月6日 17時) (
レス) id: f32dc7a6dd (このIDを非表示/違反報告)
とこ(プロフ) - Haoto-ハオトさん» ありがとうございます！嬉しい限りです、 (2021年6月6日 17時) (レス) id: f32dc7a6dd (このIDを非表示/違反報告)
とこ(プロフ) - 瑠海那さん» ありがとうございます、続編もよろしくお願いします！ (2021年6月6日 17時) (レス) id: f32dc7a6dd (このIDを非表示/違反報告)
七星 - 久々にこんなに面白い話に出会いました…!!!!!ゆっくりでも良いので続編お待ちしております。 (2021年6月6日 16時) (レス) id: f91053f6f0 (このIDを非表示/違反報告)
Haoto-ハオト(プロフ) - めっちゃ面白かったです！！続編も頑張ってください！！応援します！！ (2021年6月6日 2時) (レス) id: 17268be681 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：とこ | 作成日時：2020年6月7日 20時
