41. 微睡に赫くモノ ページ43
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「ふわぁ〜〜ぁ」
「A先輩が欠伸してるなんて珍しいですね」
「そーぉ?」
ふわふわと揺れる頭で、のろりとまぶたを持ち上げる。
いつの間にいたのか誰もいなかった談話室には傑がペットボトル片手に立っていた。
「先輩って夜更かしの常習犯なのに、授業中に眠そうにしてることってないから」
うとうとしていたせいかテレビに目を向けても、全く映画の話の筋が見えてこない。
それでもぼんやりと目を向ける。
「いつもはそうなんだけど、なんでか最近眠くてさぁ。
春がきて暖かいからかな……」
「寝るのに気持ちいい季節ですよね」
寝るなら自分の部屋に戻って寝てくださいね。まるでお母さんみたいなことを言って傑が私の横に座る。
私は目を覚まそうと少し前にグラスに入れていたお茶を飲んだ。
しばらくしてガチャリと談話室の出入口が開く音がして、タオルを首に引っ提げた悟が入ってくる。
遠目でもわかる湿った髪から、風呂上がりらしい。
「何してんの」
「特に何も?」
「ふーん」
やけに鼻につくその返事から今日の悟は機嫌が悪いと察知する。
触らぬ神に祟りなし。
視線を悟から映画に移すと、悟がどさっとソファに座る私の横に来た。
その目線がテレビに向いているのを見て、のろりとリモコンを手に取る。
どうせ内容も分からずぼーっと見てたんだから、もう一回初めから見ても構わないとおもって、リスタートボタンを押す。
流れるクラシック音。
どこか古めかしい音とともに、その映画の提供元のテロップが映し出される。
あぁ、眠い。
けど、寝たくはない。
瞳を閉じた先にあるのは、暗い世界。
顔を上げて壁にかけてある時計を見る。
ビックリな事にまだ日付さえ跨いでいない。
眠い目を擦ってもう一度グラスに入ったお茶を飲んだ。
―――そこからの記憶はもうない
―
―
テレビだけが明るい暗い談話室に、あの人が幽霊のように静かに座っているのは日常の姿だ。
今日もそれに例外は無く、談話室の扉を開けるとぼーっとテレビを眺める先輩がいた。
声をかけようとして、はっと息を呑む。
一瞬、見間違えでなければ先輩の目が赫く胡乱に光を持っていた気がした。
背筋に走る冷たい感覚。
そのまま、先輩が大きく欠伸をするまで動けなかった。
「寝たな」
「クッソ邪魔なんだけど」
そんな先輩は悟の肩を借りていつの間にか寝入っていた。
きっとアレは、
テレビの光が映り込んだだけだ。
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かるうら(プロフ) - 50話分しかなかったはずなのに、今までにないくらいの重量感で恐れ入りました。なんだか第5章くらいまで読んだ気分です。2章に行って参ります! (2020年8月3日 21時) (レス) id: 2c64977e89 (このIDを非表示/違反報告)
サイコロ - 最の高だ…推しが絡んでる… (2020年3月19日 16時) (レス) id: d3e3d1ba1a (このIDを非表示/違反報告)
さとう - とても面白いです!応援してます! (2020年3月9日 19時) (レス) id: 74e459d58c (このIDを非表示/違反報告)
朱鷺(プロフ) - 吉田さん» いいえ!神様は芥見下々先生です!!!でも、そう思ってくださり嬉しいです (2020年3月6日 22時) (レス) id: b5f5114d16 (このIDを非表示/違反報告)
吉田(プロフ) - 作者様は神でしょうか?( ˘ω˘ ) スヤァ… (2020年3月5日 1時) (レス) id: fb4495920c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朱鷺 | 作成日時:2020年1月19日 23時