37.花に嵐 ページ39
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夜蛾先生に「感動の再会なら寮でやれ」と言われて、あの後4人は寮の談話室に移った。
一年生はこの後まだ授業があったというのに、空気を読んでなくなったらしい。
……まぁ、後で振替が入るのだろう。
「ヤになったんじゃねぇの。呪術師」
硝子ちゃんみたいに涙を流してくれるわけでもない。
傑と悟2人は特に感情をあらわにするわけでもなく、終始むすっとしていた。
まぁ私が一方的に構っていただけで別に慕われていたわけでもないからこんなもんなんだろうけれど……。
悟の一言はそこそこに重い。
「高専の結界にも引っ掛からずに逃げ出せたAなら、呪術師なんて辞めて逃げ出しても捕まんなかっただろ」
“捕まらない”
その言葉に息を詰まらせた。
果たして悟はいつの間に知ったのか、どうやら私が“呪術界隈から逃げ出せない”事を知っているらしい。
そして恐らく、逃げ出したら処分されることも。
‥‥もしかしたら、私の失踪は上層部で予想以上に騒がれたのかもしれない。
五条家の悟が何か聞いてもおかしくない程に。
その上で、悟は私なら《逃げ切れる》と言った。
いろんな柵(しがらみ)を振り切って。
「……わたしは、逃げないよ」
その言葉に興味なさそうに、悟が相槌を打つ。
たぶん、硝子ちゃんと傑は話についていけてない。
「私は呪術高専の結界ぐらい、引っ掛からずに外に出れるし、もし傑と悟に両脇に控えられてもこの部屋から逃げ出せる自信もある。
高専に見つからず身を隠すのだって……、まぁそれは実践したから言わずもがな。
たぶん。呪術師の中で一番かくれんぼが上手だろうね」
「で?」
「でも逃げないよ。
私はこの生き方以外知らないもの。
大切な人が死んでも、手足が千切れても、この術式が私の体に刻まれている限り。
わたしは、この世界から逃げない」
「与えられたんじゃない。
自分で臨み選び取った道だ」
だから捨てるなんてあり得ない。
逃げるなんてもってのほかだ。
だからきっと、上層部もわたしの調査を早く打ち切った。
逃げないんじゃない。
この子たちがいる限り逃げられないと、知っていたからだ。
「ふーん。で?
その結果がその大怪我??どうせ上層部からペナルティでも受けたんだろ」
「………。」
「逃げればよかったんだ。
………こんな腐った世界から」
あぁ。
なんてキミは、残酷な事を言うのだろうか。
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かるうら(プロフ) - 50話分しかなかったはずなのに、今までにないくらいの重量感で恐れ入りました。なんだか第5章くらいまで読んだ気分です。2章に行って参ります! (2020年8月3日 21時) (レス) id: 2c64977e89 (このIDを非表示/違反報告)
サイコロ - 最の高だ…推しが絡んでる… (2020年3月19日 16時) (レス) id: d3e3d1ba1a (このIDを非表示/違反報告)
さとう - とても面白いです!応援してます! (2020年3月9日 19時) (レス) id: 74e459d58c (このIDを非表示/違反報告)
朱鷺(プロフ) - 吉田さん» いいえ!神様は芥見下々先生です!!!でも、そう思ってくださり嬉しいです (2020年3月6日 22時) (レス) id: b5f5114d16 (このIDを非表示/違反報告)
吉田(プロフ) - 作者様は神でしょうか?( ˘ω˘ ) スヤァ… (2020年3月5日 1時) (レス) id: fb4495920c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朱鷺 | 作成日時:2020年1月19日 23時