29.キミを知らない ページ31
-
「あ、しまった……」
失敗した。
大失敗だ。
たくさんの人が行き交う空港で、ふと思い出してしまったのだ。
映画のDVDのレンタル期間は明後日までだってことに。
しかしながら私は今から5日ほど主張の予定だ。しかも飛行機で。海外に。
どんなに早く終わらせても、4日はかかる。国も何個かまたいでの任務だから短縮は難しい。
………延滞料金を払うか。
「んんん。悟か傑に電話して頼むかーーー」
一緒に真夜中映画を見る同盟だから、頼めば返してくれそうだ。
悟は微妙だが。
大きいため息をついて、携帯電話を取り出す。
電話帳を漁って、あさって、あさって。
「あれ??」
ないじゃん。
今まで気がつかなかったが、私は今まで傑と悟の携番を知らないらしい。
硝子ちゃんのは一緒に出かけるから知っているけれど………、確かに今まで彼らと連絡を取るような用事はなかったな。
しょうがないので、今回の任務の補助監督官の人に悟と傑の携番を教えてもらう。
補助監督官は基本呪術師の連絡先は把握しているので、利用させてもらった。
知らない番号を打ち込んで、電話マークのボタンを押す。
待機音が鳴るなか、そういえば知らない携帯番号から電話が来て彼らが出るだろうかと疑問を持つ。
……私なら出ない。
だって怖いもん。
これが公共用の番号羅列なら違うが、個人の携番だったら話は別だ。
諦めて、延滞料金を払うかと腹を括ったとき、ブツリと携帯からつながった音がした。
『誰だよ』
こっっわ。
声が低すぎて怖い。一言目から『誰だよ』の言葉が怖い。そして直ぐに舌打ちするのも怖い。
荒ぶる心にゴクリと喉を鳴らして、声を絞り出した。
「あーー、えっと霜宮、Aです」
恐る恐るといったように、電話に向けて話しかけると、『は???』と間が抜けた声が聞こえた。
『A??A!?………なんだよお前かよ』
私の名前を呼ぶ声に、一言目のような刺はなくて胸を撫で下ろす。
「ちょっと、お願いがありまして。
電話させていただいた次第なのですが」
『は?後輩をパシる気かよ』
「ホントごめんなさい。
あの、これから海外任務なのですがDVDのレンタル期間が……」
そこまでいえば先が分かったのか、長いため息が聞こえた。
ちっと舌打ちが聞こえて、
「やだよ、面倒くせぇ」
と、ブチッと電話が切れた。
-
699人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
かるうら(プロフ) - 50話分しかなかったはずなのに、今までにないくらいの重量感で恐れ入りました。なんだか第5章くらいまで読んだ気分です。2章に行って参ります! (2020年8月3日 21時) (レス) id: 2c64977e89 (このIDを非表示/違反報告)
サイコロ - 最の高だ…推しが絡んでる… (2020年3月19日 16時) (レス) id: d3e3d1ba1a (このIDを非表示/違反報告)
さとう - とても面白いです!応援してます! (2020年3月9日 19時) (レス) id: 74e459d58c (このIDを非表示/違反報告)
朱鷺(プロフ) - 吉田さん» いいえ!神様は芥見下々先生です!!!でも、そう思ってくださり嬉しいです (2020年3月6日 22時) (レス) id: b5f5114d16 (このIDを非表示/違反報告)
吉田(プロフ) - 作者様は神でしょうか?( ˘ω˘ ) スヤァ… (2020年3月5日 1時) (レス) id: fb4495920c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:朱鷺 | 作成日時:2020年1月19日 23時