9.おやすみが嫌い ページ11
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「A、Aのじゃない呪力が纏わりついてる。
それ放って置いたらヤバいだろ?」
あぁ、先輩って呼んでくれないんだ。って思ったのは内緒だ。
結局なされるがままに抱えられ、何処かへと連れて行かれる。
目の前にあるのは、イケメンな男の真剣な顔だけだ。
「すごいね。その眼ってそういうのもわかるんだ」
心の底から溢れた言葉だけれど、行った直後直ぐに後悔した。
やっとこっちをみた五条くんの目はどこまでも冷たい青をしている。
「なに?わかってて放って置いたの?俺たちを避けようとしてたの?」
「別に避けようなんて!」
「してたでしょ。俺たちに声かける前に、離れようとしてただろ」
「………」
なにも言えず黙ってしまった。
たしかに、私にとってあの時彼らに助けを求めるなんて選択肢は存在してなかった。
「……後輩の前で、かっこ悪い真似したくないじゃん」
やっとのことで出た言葉に、五条くんは詰まっていたものを吐き出す様に笑った。
「柄にもないことするなよ、A先輩」
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結局私が下されたのは女子寮の自分の部屋に入ってからだった。
意外にも丁寧に下され、さらにはふらつく体を支えられる。ありがとうというと別にと素っ気なく返された。
五条くんに手伝ってもらって、テーブルをどかし床に引いていたラグマットを剥ぎ取ると、出てきたフローリングには得体の知れない文字が円状に描かれている模様が出てくる。
「なにこれ」
「結界張るための、補助。これで結界の精度高めるの。
一瞬だけ強い結界を張って宿儺の呪力を振り払ってくるから」
円の中に入って片膝を折って片手を床につける。
散々こき使った体に鞭を打ち、呪力を限界まで練り上げる。
結界範囲はたった人1人が入るほど。
術式を使うにあたって呪術師はイメージがあるという。例えば、そう。スイッチの様な。
私の場合は、沈む感覚だった。
暗いくらい、闇の底に身を投げた様な感覚。
その臓物の底からぞわりと湧き出る恐怖が、私のスイッチだ。
「虚構呪術、反転世界」
トプンと世界に墨を垂らしたかの様に、その円の中は黒く染まった。
光の反射さえ許さない純粋な闇。
それは、宿儺の呪力さえも飲み込み消してしまう。
一瞬にして消えた闇に、ホッと息を吐いて倒れ込んだ。
視界の隅で、五条くんが駆け寄る姿が見えた。
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かるうら(プロフ) - 50話分しかなかったはずなのに、今までにないくらいの重量感で恐れ入りました。なんだか第5章くらいまで読んだ気分です。2章に行って参ります! (2020年8月3日 21時) (レス) id: 2c64977e89 (このIDを非表示/違反報告)
サイコロ - 最の高だ…推しが絡んでる… (2020年3月19日 16時) (レス) id: d3e3d1ba1a (このIDを非表示/違反報告)
さとう - とても面白いです!応援してます! (2020年3月9日 19時) (レス) id: 74e459d58c (このIDを非表示/違反報告)
朱鷺(プロフ) - 吉田さん» いいえ!神様は芥見下々先生です!!!でも、そう思ってくださり嬉しいです (2020年3月6日 22時) (レス) id: b5f5114d16 (このIDを非表示/違反報告)
吉田(プロフ) - 作者様は神でしょうか?( ˘ω˘ ) スヤァ… (2020年3月5日 1時) (レス) id: fb4495920c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朱鷺 | 作成日時:2020年1月19日 23時