【使わぬのなら】 ページ8
_
『…………あさ?』
起きると腕の中にいた。
長い腕はすっぽりと私の小さな体を覆い、湯たんぽがわりにしていたらしい。
その腕を掻き分け、布団から這い出る。
音を立てないように、身支度を整え始めた。
どうしても、太宰がいない状況で社長と話がしたかったから。
__________________
_____________
______
今日も世界は淡泊だ。
灰色の世界に、朝日など存在しない。
小さな足を忙しなく動かして、探偵社ヘと向かう。
『おはよう、国木田』
探偵社には国木田がもう出社していた。
周りを見ると他には誰もいない。
大方、昨日は太宰のせいで仕事が終わらなかったのを今片付けているのだろう。
「ん?
……あぁ、Aか。早いな。
あの包帯無駄遣いはどうした?」
『___まだ寝てた』
変なあだ名が付いている。
まぁ、時間が惜しいから突っ込む事はしないけど。
『社長は?』
「もう来ておられるが………。如何した?」
『………内緒』
__________________
____________
______
『A。入る』
ノックは4回。
目上の人にするほど、数を多くするらしい。
中に入ると、社長は文を書いていた。
私を見ると手前のソファーを目で示す。
座れという意味だろうか?
「して、何用だ。
まだ幼子は寝る時間だろ」
『………昨日社長が私の異能の嘘をいったから。
私に色がないのは、副作用じゃない』
「…………。」
『私の目は「死期」を視覚情報として捉えることが出来る。
私の云う死期は生命活動の終焉ではなく、「存在の寿命」。
意味や存在が始まりを持ってるように、「何時か来る終わり」さえを私は見ることが出来る』
人には見えないが、確かに存在している『死』という現象。
『生』と『死』の境界を。
万物の綻びを私は《線》として視ることが出来る。
『種田に云われた筈。
私に色が無いのは、私が色を切り《殺した》から』
赤しか写さない世界など、色を失え。
白と黒。灰色に染まればいい。
「お前は、その目で何を殺すか?」
首を降る。
「なら、説明など無用だ。
使わぬのなら、無いと同意」
私は目を見開いた。
_
【使わぬのなら】
161人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
マリンゴ(プロフ) - 淳じゃなくて敦じゃないですか? (2018年6月13日 16時) (レス) id: a4638c592a (このIDを非表示/違反報告)
らっこ - 更新待ってましたーーー!!!!!もう大好きです!!なんども読み返してます笑これからも更新頑張ってください!! (2018年6月8日 0時) (レス) id: b3cc38c94b (このIDを非表示/違反報告)
朱鷺(プロフ) - ここみんずさん» 盲点でした。ご指摘ありがうございます!異能力名はそのままの【空の境界】にしたいと思うので、そっちの方で後で注釈のページを作りたいと思います。関連キーワードの方は最大3個までしか興すことが出来ないのでタグ付けできなく申し訳ないです (2018年3月2日 23時) (レス) id: 27d4bf92b8 (このIDを非表示/違反報告)
ここみんず - ギリギリそのまま使っているというわけでもないですが、タグにないというのもどうかと個人的に思ってしまったのです。ですが私も面白いと感じて先を期待してるので頑張って下さい (2018年3月2日 20時) (レス) id: dbfcb54f1b (このIDを非表示/違反報告)
ここみんず - おや?夢主の能力名や力といい、最初の辺りで太宰に発したセリフにどこかで聞いた覚えがあります。主にタイプムーンの作品で。これで本当にわからないなら、fate世界観とでも加えておいたほうがいいと思います。ナマ言って申し訳ありません。 (2018年3月2日 20時) (レス) id: dbfcb54f1b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:朱鷺 | 作成日時:2017年11月8日 23時