【落日に騙る】 ページ7
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静かな夜。
社員の寮の一室があてがわれた。
布団が一組だけ置かれた簡素な部屋。
太宰は胡座を組み鼻歌を歌いながら、本を読んでいる。
私は胡座をかいたその膝の上で、彼の本を覗いていた。
すっぽりと足の間に収まる私。
『……太宰嬉しそう』
「そりゃあね。見てよこの本!
完全■殺本だって!私のためにあるようなもんじゃぁないか」
『違う。そうじゃなくて……』
質問の意味をわかってるくせいに、わざと誤認する振りをする。
眉を寄せて、太宰の腹をつねった。
「痛い痛い、」
『馬鹿』
困ったように笑った太宰は本を置いて、私の短い髪をすき始める。
幼い子供をあやす様に、背中をリズミカルに叩く。
『………太宰?』
「うん。
そうだね、私は嬉しいよ。
探偵社に入ってよかった」
『………………。』
そう云って笑う太宰に嘘の色はない。
優しく髪を梳かれるのが心地よく、目を細める。
背中を叩くのは、眠気を誘ってあくびを噛み殺した。
「国木田くんも、………うん。
いい相棒になりそうだ。
優秀だし、何よりもからかいがいがある」
『______先輩を虐めるのはいけない』
「Aがそう云うのなら程々にしとくよ」
………なんで私基準なのか。
「それにね。
私が何より嬉しいのは、Aを受け入れてくれたことだよ」
『へっ………?』
驚いて上を見上げる。
太宰と目が合って、彼はふわりと笑った。
視界が暗くなったと思ったら、額に接吻を贈られる。
「_______痛っ」
『馬鹿ッ!女誑し!』
大袈裟に額をさすってやる。
全く!なんて野郎だ!!
「良いじゃないか!
知ってた?
額への接吻は親愛を意味してるんだよ」
………そんな嬉しそうに云われたら、これ以上起こるに怒れない。
今日。
2年ぶりに離れて過ごした。
もしかしたら、私も太宰も寂しかったのかもしれない_________。
『ねぇ。
織田作は_________、何でも無い』
喜んでいるかなんて、死者の言葉は生者には分からない。
頭を太宰の胸に預ける。
あぁ。
眠い。
なれない事は、するもんじゃないな。
「此処で寝ていいよ。
後で布団に運でおくから」
子守唄のように甘い声。
太宰の言葉に、私は目を閉じた。
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【落日に騙る】
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マリンゴ(プロフ) - 淳じゃなくて敦じゃないですか? (2018年6月13日 16時) (レス) id: a4638c592a (このIDを非表示/違反報告)
らっこ - 更新待ってましたーーー!!!!!もう大好きです!!なんども読み返してます笑これからも更新頑張ってください!! (2018年6月8日 0時) (レス) id: b3cc38c94b (このIDを非表示/違反報告)
朱鷺(プロフ) - ここみんずさん» 盲点でした。ご指摘ありがうございます!異能力名はそのままの【空の境界】にしたいと思うので、そっちの方で後で注釈のページを作りたいと思います。関連キーワードの方は最大3個までしか興すことが出来ないのでタグ付けできなく申し訳ないです (2018年3月2日 23時) (レス) id: 27d4bf92b8 (このIDを非表示/違反報告)
ここみんず - ギリギリそのまま使っているというわけでもないですが、タグにないというのもどうかと個人的に思ってしまったのです。ですが私も面白いと感じて先を期待してるので頑張って下さい (2018年3月2日 20時) (レス) id: dbfcb54f1b (このIDを非表示/違反報告)
ここみんず - おや?夢主の能力名や力といい、最初の辺りで太宰に発したセリフにどこかで聞いた覚えがあります。主にタイプムーンの作品で。これで本当にわからないなら、fate世界観とでも加えておいたほうがいいと思います。ナマ言って申し訳ありません。 (2018年3月2日 20時) (レス) id: dbfcb54f1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朱鷺 | 作成日時:2017年11月8日 23時