【文スト】包帯と朋友の忘れ形見【壱】

【私の灰色の世界】 ページ14

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____酷く、淡白な世界だ____








この世界は、灰色だ。
白と黒で構成され、物も人も全てが無機質だ。


彼がいた頃の、色鮮やかな世界はもう無い。




「A、仕事だってさ。
行くよ」




読んでいた本を置いて、こくりと頷き差し出された手を取った。
自称、四年前から私の育て親だというこの男は満足そうに笑い歩き出す。



「虎探しだってさ。
国木田くんも人が荒いよねー」




『……………。』




この白黒の世界は、この男に良く似合うものだ。
きっと、私の目に色彩が戻っても彼はモノクロのまま。



私は赤が好きだ。
けれど血のような真っ赤な赤は嫌い。


もう少しオレンジに近い、優しい赤。

私の友人の色。




けれど、白と黒しか映さなくなった私の目には、もう見えない。




『………太宰』



「ん？なに？
そっちの方が気になるの？」





握られた手を引っ張って、川へと続く道を指さした。
そしたら彼は、疑うことなく針路を方向転換させる。


私は無言のまま歩いても、彼はにこにこしながら歩く。





「しっかし、いい天気だねぇA。
このまま川に飛び込んで入水でもしようか？」



『………駄目。
約束がある。私はまだ死ねない』




橋の上についた。
一緒に心中しないか？と聞く太宰に、私は淡白に応える。




「………そうだね。
私も君を死なせはしないよ」





そう云って太宰は私の頭をなでた。
相変わらず不器用で、_________何故か彼は泣きそうな顔をしている。



けれど直ぐヘラりと笑うと橋の手すりに足をかけた。




「じゃぁ、知らない人についてったらダメだよ。
車にも気をつけて。
それじゃ、__________________バイバイ」




親らしい言葉をかけた後、太宰は川に飛び込んだ。
云ってることと、やってることがチグハグなのは何時もの事。




『………どうせ、死な無いくせいに』





ポツリと呟く。
私と太宰の関係は酷く歪で、曖昧で。

灰色に満ちた、この世界で私が生きるのは偏に約束があるから。






“_____お願いだから死なないでくれ！

生きろ！！A______"






泣きそうな、哭きそうな友人の顔が鮮明に浮かぶ。
その言葉が、今尚絡み付いて私を離さない。

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【私の灰色の世界】
(下川で待ってたら流れ着くかな)

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