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あの頃を思い出すような、軽快ないつも通りのやり取り。
懐かしんでいるうちに、見えてきたのは花火を見てた穴場の河川敷。
穏やかに流れる水が月明かりに照らされてキラキラと反射する。
車を道路のかたに停めたと思ったら
「はい、早よ降りて!」
と車内から追い出された。
なんやねん、って思いながら川を見ていたら花火を両手に抱えた康二が「ほないくで!」と走り出した。
その後ろを追うように私も河川敷へ。
置き型の花火だったり、手持ちだったりを2人で高校生の頃みたいに楽しんだ。
時折、いつも持ってる一眼のシャッターを切りながら。
花火の最後といえば線香花火。
これは子どもの頃からの決まり事だった。
「線香花火勝負や!」
「私負けへんよ!」
「俺も負けへんで!」
なんて子どもじみた勝負を2人で始めた。
「なあ、A。」
「ん?」
彼の声に釣られて、パチパチと弾ける輝きを瞳に捉えた彼の横顔を見つめる。
「俺さ、自分に自信あんまないやんか?」
突拍子のなさは相変わらずか。
確かに彼は自信家に見えてネガティブで、繊細な人間だ。
傷ついたとしても、自分のうちに隠す人。
「まあ、康二はネガティブがちやんな。よく言えば、慎重とも言えるんちゃう?そんなとこも好きやけど。」
驚いた時に目をパチパチする癖は、相変わらず治ってなさそう。
大きく息を吸って吐いた。
パチパチとした瞳が私を捉えた。
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作者名:ミヤ | 作成日時:2023年7月26日 21時