No.03 初めての ページ3
＊
兎々丸Aは、いわゆる異形型の“個性”をもっている。
産まれながらにして兎の耳と尾をもち、兎のようなことは大抵できるという異能。危機察知能力に長け、高い跳躍力と脚力をもつ。そんな“個性”。
母方の血筋では兎に関わる“個性”が多く見られる。
兎であるAは、誰にも負けないスピードをもっていたのだ。
「ウサギさんのこせーかぁ」
「すげー！」
「ぼくもこせーでないかなー」
一斉に褒められるものだから、Aは混乱してしまった。
* * *
たくさん遊んだAは、迎えに来た母と共に保育園の門を跨ぐ。
「じゃあね！」
「またあしたなー」
見送りに来た男の子二人…爆豪勝己と緑谷出久は、今日初めて出来たAの友達である。
「うん。えっと……また、あしたね。かつきくん、いずくくん」
まだ慣れないAは、母の手を握りしめてもじもじと返した。
「お友達できたのね」
「うん！ 鬼ごっこしたの」
「そう。楽しかった？」
「とっても！」
最初に話しかけてくれた勝己と、“個性”をたくさん褒めて優しくしてくれた出久。Aにとって二人は、初めての友達といえる存在。
Aは嬉しくなって、母と一緒にぴょんと跳ねた。
* * *
保育園に入園してから数ヵ月後、ある休日の午後のことである。
母が休日出勤で不在なため、Aは父と二人で少しの遠出をしていた。遠出といっても、静岡県内なので往復に何時間もかかるような場所ではない。
父の実家近くで美味しいキャロットケーキのあるパン屋があるらしく、そこへ買い物に来たのだ。
目当てのキャロットケーキはすぐ手に入った。
母と、Aと、それから母の妹の分を購入した。母の妹は、今年度にプロヒーローとなったばかりだから、そのお祝いのようなものである。
兎はニンジンが大好物なのだ。
「買い物、疲れたか？ A」
「ちょっぴり」
「はは、父さんもだ。じゃ、そこの公園で少し休もう」
「さっきかったドーナツたべよう？」
「お、いいねぇ」
駐車場に車を停め、ドーナツの袋を持って公園に入る。
丁度良いベンチを見つけたので、そこへ腰掛けた。
「ドーナツうまそうだな」
「うん！ いただきます」
「いただきまーす」
かぶりつくには大きいドーナツを、Aは手でちぎって口に入れた。
「おいしい……!」
Aは思わず感嘆の声が出た。
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サブとバラ(プロフ) - １ちゃん様、うなﾁｬ様、麗紅花様。レスを長らくお待たせしてしまい、申し訳ありません。コメントしてくださり、本当にありがとうございます！そろそろ更新を再開する予定でございます。そのときには、また応援していただければ幸いです。 (2021年3月24日 22時) (
レス) id: 4ca3bc2d2a (このIDを非表示/違反報告)
麗紅花(プロフ) - はじめまして。あなたが書いた小説を読んで最高でした。何よりも可愛らしくて、微笑ましくて、同時にちょっぴり切なくて良かったと思いました!続き、楽しみに待っています。 (2020年7月31日 21時) (レス) id: b338802f9d (このIDを非表示/違反報告)
うなﾁｬ - 面白かったです。楽しみに待ってます() (2020年6月21日 21時) (レス) id: 6b728aedaa (このIDを非表示/違反報告)
１ちゃん - とっても面白かったです!更新よろしくお願いします! (2020年5月24日 12時) (レス) id: 43879a9f7a (このIDを非表示/違反報告)
リヴ - いえいえ！！私も早まったコメントをしてしまい、申し訳ございません！！ (2020年5月23日 16時) (レス) id: 9de3fc0d23 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：サブとバラ | 作成日時：2020年4月23日 23時
