初めの一歩 ページ16
｢俺、全然お前の気持ちに寄り添えなくて、ごめんな。
こんな言い訳聞きたくねーって思うかもしれないけど、…どう接したら良いのか、解らなくて。
けど、俺、頑張るから。側に、いるから。
だから、俺はお前と家族になりたい｣
きょとんと目を丸くして言葉を発さないAに、キヨは苦笑する。
｢…こんな奴、もう信用できない？｣
｢違うっ！｣
強い語気で否定され、やや面食らう。A自身も、自分の声の大きさに驚いているようだった。口は何か言いたげに閉じたり開いたりしていた。
長い時間の沈黙だった。どちらもお互いから目を離さなかった。
｢…ほんとに｣
｢うん？｣
蚊の鳴くような声だったが、キヨは聞き逃さなかった。何？と優しく問いかけると、
｢ほんとに…一緒にいてくれる？｣
キヨを見上げる大きな瞳は、かすかに潤んでいた。
“側にいる”という言葉が、Aにとってどれだけの重みを持つのか、キヨには十二分に理解できた。
｢…うん。独りにしない。約束する｣
手を差し伸べた。あの日、差し出すことができなかった手を。
小さな手は、おずおずと、しかしその身を預けてくれた。
家族になるための最初の一歩を、ようやく踏み出せた気がした。
帰る道すがら、Aはぽつりぽつりと話してくれた。
環境が目まぐるしく変わり、上手く適応できなかったこと。
授業参観を知らせなかったのは、不規則な生活をするキヨにとって、負担になるだろうと思ったからだということ。
今までのことは本当に感謝しているということ。
頷く他キヨにはできなかったが、話の合間合間でAが言ってくれる言葉に救われた。
｢ありがとう。…お兄ちゃんがいてくれて、良かった｣
初めて呼ばれた兄の称。Aがそう呼んでくれた嬉しさと、ここまで来るのにずいぶん遠回りをしてしまった悔しさが相まって、口元だけで笑った。
家に着いて、1度Aの話は区切られた。彼女は部屋に荷物を置きに行き、キヨも自室に戻る。部屋はぐちゃぐちゃなままだ。…大分慌ててたもんなあ、仕方ないか。簡単に片付けようと膝をついたとき、
｢…お兄ちゃん｣
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時代(プロフ) - 牧野さん» 最後までお付き合いいただきありがとうございます！続編や次回作については今のところ白紙ですが、余裕ができたら書いていこうと思いますので、その際はよろしくお願いします(´▽｀) (2021年5月17日 7時) (
レス) id: 7902b277d6 (このIDを非表示/違反報告)
牧野 - 完結おめでとうございます！終わっちゃうのが寂しいくらいとても面白かったです。続編とかあったら嬉しいですが、無理はせずこれからも頑張ってください(≧∀≦) (2021年5月16日 22時) (レス) id: 90b419fcc1 (このIDを非表示/違反報告)
時代(プロフ) - あみさん» コメントありがとうございます！もう少し続く予定ですので、お付き合いいただければ幸いです(^^*) (2021年4月6日 7時) (レス) id: 7902b277d6 (このIDを非表示/違反報告)
あみ - 面白いです！応援しております！頑張ってください！！ (2021年4月6日 0時) (レス) id: 6eb6482913 (このIDを非表示/違反報告)
時代(プロフ) - くるみさん» 私にはもったいないほどのお言葉…！本当にありがとうございます。前作もお読みいただき、嬉しい限りです。ご期待に沿えられるよう頑張りますので、これからもよろしくお願いします！ (2020年10月27日 22時) (レス) id: 7902b277d6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：時代 | 作成日時：2020年10月17日 16時
