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横光利一の戦う理由 ページ5
侵蝕者と戦っていると、時折例えようのない黒い感情に囚われる。
それは決まって精神が侵蝕された時だ。
その原因である侵蝕者から離れても＿＿つまり、有碍書から撤退しても＿＿その感情は手前の心を支配し続ける。
そのせいで何度、心配をしてくれた彼に刺々しい言葉を吐いただろうか。
彼の困ったような疲れたような表情が脳裏に焼き付いて離れない。
それでもその後、手前が補修室から出てくると彼は安心したようにへらりと笑う。
申し訳なさを打ち消すためにあなたの手腕がいいからだと褒めてもそんなことはないと謙遜して照れたように顔を背ける。
そんな彼が、純粋に好ましいと思った。
そして、彼の愛する文学を守りたいと思った。
だから。
「貴様の急所はここだな？」
今日も手前は、彼の為にこの刃を振るう。
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作者名：澪 | 作成日時：2018年9月20日 15時
