参謀と王様 ページ28
「大丈夫ですか、お嬢さん」
腕を掴まれていた少女に微笑みかけると、彼女の顔が強ばった。
ナンパしようとしていた男達は逃げたみたいだ。この子とゆっくり話しても怒られはしないだろう。
「……コーヒーでも、どうです？」
「いえ結構です。助けて頂いてありがとうございました。失礼します」
「ご友人を待たれてるんでしょう？」
「連絡取れますから」
「ほんの少しでいいんです」
「アイドルがナンパですか」
「ふふ、人聞きの悪いことを言わないでくださいよ。お礼だと思って」
「お断りします。代わりにお金払いますから1人で行ってください」
「ええ？寂しいなあ。貴女みたいな素敵な人とお茶をしてみたいと思ったんですけれど」
「他の人を誘ったらいかがですか？」
「貴女がいいんですよ」
「……後ろ、気をつけてくださいね？」
「えっ……ああああああ痛い痛い痛い痛い！！痛いよ始えええええええ！！」
ぎりぎりぎりぎりぎりぎり。我らが王様の必殺技・アイアンクローだ。
「黙れナンパ眼鏡」
「ふ、風評被害だ！！」
「この状況のどこが風評被害なんだ」
呆れたようなため息。漸く解放された頭をさすりながら始の顔を窺う。
「はあ……こいつがご迷惑をおかけしました」
「いえ、じゃあ私はこれで」
「……？待ってください。足、大丈夫ですか？」
「え、あ……あれ……いっった……」
「1回靴脱いでください。靴擦れ起こしてるかも」
パステルピンクのパンプスを脱がせると、薄いベージュのストッキングに血が滲んでいる。
「……急いでるのは分かってます、が、手当、手当だけ、させてくれますか」
「……はい」
暗い顔で頷く彼女は、なんだか気まずそうだった。
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作者名：澪 | 作成日時：2018年9月20日 15時
