変装と捕獲 ページ27
しふぉんわんぴ。かわいいひーるのぴんくのくつ。きれいなすてっちのしょるだーばっぐ。うちゅうてーまのねっくれす。きらきらのいやりんぐ。めいくはなちゅらるよりのきれいけい。
よくわからない呪文のような単語が飛び交う。
着せ替え人形のように乱から渡される服を試着しては着替えて、だんだん疲れてきたちょうどその時。
「よーし！できたっ」
乱の声に鏡を見ると女子がいた。こいつぁ驚きだずぇ……。
「これならきっとバレないよ！あ、お会計お願いします」
乱がスマートにクレカを出している……俺のだけど別にいいや……貯金いっぱいあるし。
履きなれないヒールで、乱に手を引かれて店を出る。知らない間に彼も髪型を変えていたらしい。すっかり渋谷の街を歩く若者の姿だ。
「あるじさん、とってもかわいいよ」
「……ありがと」
仕事の時にしか出さないかわいめの声。こういうの大事。
塗られたグロスの予想以上の粘度の高さに驚きながら、ぽつぽつと話をして意識を女子に近づけていく。もしうっかり遭遇した時のためだ。
……ロングスカートでよかった。乱の温情、嬉しい。
「んー……あ、あるじさんはここで待ってて！ここなら人目につかないから！」
「え！？あ、ちょっ、みだ……！」
追おうとしたがヒールで走れる訳もなく、駆け出す乱の背中を見送る。あいつ何する気だ。
力なくベンチに腰掛けてイヤホンをつける。流れ出すのは黒の参謀さんの新曲。追われてるのになんでこの曲聴かなきゃならないんだ。曲を切り替えようとした瞬間、イヤホンが取られた。
「……え」
「オネーサン綺麗だね！1人？オレ達と遊ばない？」
な、ナンパだー！！しかも複数人！！
……俺、男なんですけどね！？！？
「あ、いえ。私、友人を待っていて……」
「えー？ちょっとだけだしいいじゃーん」
「あの、困ります」
「いいからいいから！」
なんで俺こんなあるある状態なの！？俺男だよ！？
腕を掴まれて振りほどこうとしていると、男の手首を誰かが掴む。
「……困ってるでしょ？離してあげてくださいよ」
……アッ(察し)。この声めっちゃ聴いたわ。主にCDで。
「大丈夫ですか、お嬢さん」
恐る恐る顔を上げると、鶸萌と視線が絡み合った。
……はい。
弥 生 春 に 捕 ま り ま し た 。
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作者名：澪 | 作成日時：2018年9月20日 15時
