【文アル】兼業さんの話【とうらぶ】 (ページ23)

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研修終了翌日、厨房ページ23

「芋終わったぞー」

「はーい！菊池先生、裏漉しお願いしますねー」

「おー、任せろ」

「司書サン、言われた通りオレンジジュース買ってきた」

「ありがとうございます……あったかいですね此れ」

「あ、ごめん……落としちゃいけないと思って」

「ふふ、大丈夫ですよ。どうせ此れから熱しますし」

甘い匂いの充満する厨房。
司書は多喜二の買ってきたオレンジジュースを分厚く剥いたさつま芋の皮と一緒に鍋に入れる。

「それ、煮るのか？」

「はい。美味しいんですよ？芋皮のオレンジジュース煮」

「出来たら、味見していいか」

「沢山作るので沢山食べてくださいねー。菊池先生、進捗如何です？」

鍋を火にかけて菊池の方へ目を向ける司書。

「……腕が、つらい」

「でしょでしょ？でももう割と進みましたね。早いですよ」

「まじか、頑張る」

裏漉しはかなり辛い作業だ。
其の辛い作業をこの速度でやってる辺り、菊池は軽くトラン〇ムしてる気がする。

「あ、そうだ。またおつかい頼んでいいですか？」

「ああ。俺にできることなら」

「じゃあ梔子の実を買ってきてください」

「分かった。スーパー……で、いいんだよな」

「はい」

正直、多喜二に頼むのは1番安全で確実だと思う。
何故なら彼奴はいつもフードを目深に被っているから顔が目立たない。つまり女性に囲まれない。
つまり仕事が早くて丁寧で1番頼りになる。

この司書、俺たちの割り当て完璧過ぎだろ。

そんなことを考え乍ら、俺はひたすら芋を茹で続けた。