☆16ページ☆ ある少年との出会い【桜の森の満開の下編】 ページ19
あれ?私、今…どうなってるの?
「桜下!おい、桜下!」
私を必死になって叫ぶ、だけど…声を届けるどころか….だんだんと意識が遠のいていく。
嗚呼、私は此処で死んでしまうかなぁ?
まだ、お爺ちゃんの事も…まして、家族の事すら満足に知らないというのに。
追憶の中で、Aはある声を聞いた。
"ありがとう、巫のお嬢さん。後はわたくしが"
その声は暖かく優しい声だった。
一方で。
「桜下!何で、お願いだ、死なないでくれ!」
安吾の脳内には太宰とオダサクが自分より先に死んでしまった頃の記憶が過ぎった。
彼はずっと心の中で後悔の念を抱きながら生きてきた。
彼…坂口安吾は二人が死んでから何度も何度も死のうとした。
然し、幸か不幸か、彼は戦争の中を生き延び人の堕落について綴り、気紛れに作品を生み出し続け、人気作家となっても心に空いた穴は埋まらず、結局、逝ってしまった友に会う為に死ぬ事は叶わなかった。
死んだら死んだで、俺は暫くあの世には行かずブラブラと自分の書いた色んな作品を渡り歩いた。
そんな時、ある少年に出会った。
「少年、その本が好きなのか?」
聞こえる筈ないと思ってたが、その子には俺の事がバッチリ見えて。
「うん、好きだよ!
特に無頼派の三人が大好きなんだ!」
あの言葉は素直に嬉しかったな。
その事がキッカケで少年と仲良くなった。
丁度、息子か孫を持った感じで、楽しかったのを今でも覚えてる。
時は流れ、少年は青年へと成長した頃だったか…アイツは変な事を言い出した。
「なぁ、アンタは呪いって信じるか?」
驚いたが、俺は。
「さあな、信じるか信じないかは人次第じゃないか?」
「そっか…俺はさ、別に呪いで死ぬのは怖くないんだ。でも、俺が死んだら母さんを独りにしちまう。
其れが一番恐ろしいんだ。」
何でも青年の母親は若くして少年を孕み、女手一つで育てたらしい。
俺もお袋が好きだったから気待ちは分かる。
「安心しろ、もし、お前が呪いで死んでもお前の大事な者は俺が守ってやるからよ。」
「アハハ、其れなら安心だね。
でも、案外アンタが俺の家族に救われるかも知れないよ。」
その会話を最後に俺はあの世に行き、少年とは会わなくなった。
なぁ、少年、もしこの、声が聞こえているのなら、俺の大切な女を守ってくれないか?
少年…いや、"桔梗"
安吾の目から涙が一粒、桜下の頬に流れる。
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なのは(プロフ) - 更新楽しみです! (2020年7月3日 3時) (レス) id: 122a982782 (このIDを非表示/違反報告)
空夜☆時音(プロフ) - 夢さん» ありがとうございます!pixivとこの作品は重なる様に書いて居ますので好みによって違うかも知れません。これからもよろしくお願いします! (2020年5月25日 15時) (レス) id: b7a01024a7 (このIDを非表示/違反報告)
夢 - pixivでも見てます!更新頑張ってください!(私も小説頑張ります) (2020年5月25日 14時) (レス) id: ed90ac981f (このIDを非表示/違反報告)
夢 - がんばれがんばれ(語彙力) (2020年5月25日 10時) (レス) id: ed90ac981f (このIDを非表示/違反報告)
べっこうあめ - 初コメ失礼します! めっちゃ面白いです!作ってくれてありがとうございますm(_ _)m (2020年5月21日 8時) (レス) id: 036a34d0ed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:空夜☆時音 | 作成日時:2020年4月18日 3時