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☆13ページ☆ 優しい香り 【桜の森の満開の下編】 ページ16

『(芥川先生、私の声が聞こえますか?)』


「(うん、聞こえるよ。何かあったのかい?)」


『(先程、太宰治さんがそちらに向かいました。
恐らく、夜までには到着する筈です。)』


「(うん、分かった。
にしても、随分と便利な枝だね。
何時でも君の声が聞こえて来るから。)」



『(言っときますけど、使えるのはその枝の花が散るまで、ですからね。
それ以降は使えません。)』



「(そっか、なら、早目に片付けるから其処で待っていてね。)」


こうして、二人の会話は途絶えたのだった。


一方、夜の都では。


「あんた、今日は綺麗な女の首を取ってきておくれ。」


俺は女房の言葉通りに、今日も夜の闇に紛れ、人を襲いポロリと首を落とす。


正直言って、キリがない。


心の中では山に"帰りたい"と願って居ても、体はいう事を聞かない。


まるで、俺は女房に操られた人形のようだ。


嗚呼、帰りたい…アイツが居るあの山に。


安吾はたった今落した首を拾おうとする。


すると…


「止めろ、安吾!俺が分からないのか!安吾!!」


ヤケに紅い優男が俺を安吾と呼ぶ。


違う、俺は…俺は…


その時、そいつから懐かしい香りがした。


間違える筈がない。この優しい香りは…


「桜下…お前は…今の俺を…」


彼はまるで泣きそうな子供の様な表情で、太宰に刃を振り下ろそうとした。


その時、芥川が間に入り、安吾の攻撃を受け流す。

「芥川先生!」

「一応、聞くけど、心中じゃないよね?」

「ち、違います!」

「そう、なら良かった。」

芥川は感情がない安吾に対し、言葉を発する。

「坂口安吾…いや、今は一つの桜に執着する炳五という山賊かな?」

「お前、あの男の仲間か?」

あの男とは恐らくオダサクの事だろう。


「そうだと言ったらどうするんだい?
彼の様に僕達を切り捨てるかい?」


「…いや、今夜欲しかった物を手に入れればお前達に用はない。」


「そうか、では此処はお互い手打ちという事で良いかな?」


沈黙は肯定だ。


そうして、去ろうとした時だった。


「安吾!
ごめん、俺が世の中に耐えられなくて心中したから…お前を苦しめて、一人にしちまった。
だから、此れからは俺やオダサクが側に「止めろ!それ以上…言うな。」安吾?」

悲嘆の叫びにも似た其れを太宰は感じ口を閉じる。


すると…安吾は震えた声でこう言った。


「俺は…桜下を失いたくない。孤独になりたくない。
だから、放っておいてくれ。」


そう言って去っていく、安吾を二人は黙って見送ったのだった。

☆14ページ☆ 選ばれた者 【桜の森の満開の下編】→←☆12ページ☆ 紅の彼 【桜の森の満開の下編】



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設定タグ:文豪とアルケミスト , 地縛少年花子くん , アニメ沿い   
作品ジャンル:アニメ
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なのは(プロフ) - 更新楽しみです! (2020年7月3日 3時) (レス) id: 122a982782 (このIDを非表示/違反報告)
空夜☆時音(プロフ) - 夢さん» ありがとうございます!pixivとこの作品は重なる様に書いて居ますので好みによって違うかも知れません。これからもよろしくお願いします! (2020年5月25日 15時) (レス) id: b7a01024a7 (このIDを非表示/違反報告)
- pixivでも見てます!更新頑張ってください!(私も小説頑張ります) (2020年5月25日 14時) (レス) id: ed90ac981f (このIDを非表示/違反報告)
- がんばれがんばれ(語彙力) (2020年5月25日 10時) (レス) id: ed90ac981f (このIDを非表示/違反報告)
べっこうあめ - 初コメ失礼します! めっちゃ面白いです!作ってくれてありがとうございますm(_ _)m (2020年5月21日 8時) (レス) id: 036a34d0ed (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:空夜☆時音 | 作成日時:2020年4月18日 3時

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