異変 ページ5
少しはしゃぎ過ぎたみたいだ。一度も来たことがないところまで来てしまった。
空が赤く染まっていく。記憶をたよりに帰ろうとするけど、合っているのか分からず不安になる。
しばらく彷徨っていると、違和感に気付いた。夕日にしては朱すぎる色が森の奥から差している。燃え臭い匂いがする。木々の崩れる音、人々の悲鳴がかすかに聞こえる。当たってほしくない予感を抱えて火の元へ急ぐ。
燃える村を遠目に見てさらに早くしようとしたとき、咆哮が響いた。足を止めた僕の道を塞ぐように現れたのは巨大な狼。紅い瞳が僕を地に縫い付ける。血の様な、僕に似た魔物の瞳。
「悪魔だ!！ 魔物の手先だ！！」
やだ....
「アイツはヒトじゃない」
やめてくれ.....
「悪魔の血族も悪魔だ」
ちがう！！
エル「あぁぁぁぁあぁぁーー！！」
奴に弓を射かける。けれど、それは傷ひとつ付けられずに弾かれ、奴の怒りを買った。
死ぬと思った。それは怖くなかった。母さんや、ベルベを残すことになるかも知れないことがきがかりだった。力が抜けて膝を付く。
どうか、二人は幸せであります様に....
ザシュッ
エル「え...」
何が、おきた。
うつむいていた顔をあげる。
奴の目に矢が深く刺さっている。唸る奴のもう片目も抉るように潰され、巨体が地響を立てて地に沈む。
付いていけない僕の肩に手が置かれる。
驚いて振り向くと大きな黒髪の人が心配そうに僕を見ていた。
？「大丈夫か？怖かったやろ？」
そっと差し出された手を見て我に帰る。
振り払って村に駆ける
エル「ベルベ！母さん！」
目の前まで来たときにはもう、焼け落ちた残骸が静かに燃え尽きていくだけだった。
人の声はしなかった。
なんで。 なんで。どうして。
「お前が悪魔だからだ」
いやだ....
「悪魔は災いを引き寄せる」
二人は....皆は....
「悪魔に関われば滅びる」
僕の....せいで....
？「泣いてる暇なんかあるんか」
知らない声。
いつの間にか目の前に立っていた人が不機嫌に
吐き捨てた。答えない僕にしびれを切らして襟首をつかみ上げられる。
？「うずくまってなんか変わるんか。変わらんやろ。
死んだ奴も、燃えた村も戻らん。なら、そいつらの分まで生きんでどうする。
さっさと目ぇ覚ませ。」
怒鳴るその人の翠の瞳は鋭かったけど、どこか悲しげに揺れていた。
乱暴に下ろされた後、頬を伝う水を拭って外へ向かう翠の人の後を追った
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