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そして5月終盤、中間テストをなんとか終えた次の日のLHRで、席替えをすることになった。
定期テストごとにするらしい席替えは、なんとなくみんなのテンションが上がるちょっとした行事みたいなもので、今まさに発表された新しい席順に教室は盛り上がっている。
でも、そんな風に盛り上がるのは特別仲良しの人や好きな人がいるからで、ぶっちゃけみんなと浅くしか付き合えていない私には、そんなにテンションを上げる要素もなくて。
「はい、じゃあ新しい席に移動してくださ〜い」
そんな担任の合図とともに一斉に動き出して、私も新しく決まった窓際の後ろから二列目に座った。
ちなみに私の隣の席は、
「よろしく」
『よろしく、』
クラスの人気者、小島健という男。
私の返事ににかっと笑った彼は、斜め前に座っているらしい友達に名前を呼ばれて話し始めた。
ここ、結構良い席やな。後ろやし、端の列やし。でも窓際やから、暑くなってきたらしんどいかなぁ？
一人ぼーっと心の中でこの席について評価していたら、不意に隣から視線を感じた。一瞬勘違いかと思ったけど、多分違う。ガン見されてる。
さっきまで友達と話してたはずやのに、と不思議に思いながら右を見ると、ばちっと目が合った。
「あ、気付いた」
『や、気付くやろ。視線痛かったもん』
そう言えば彼は笑って、「まぁまぁ、仲良くしよや。まずは自己紹介から」なんて畏まって言う。
「生まれは青森県、育ちは福岡県、これ全部嘘〜！小島健です！」
『っはは！なんそれ！』
唐突なギャグに吹き出してしまって、そしたら彼も満足そうに笑っていた。
「やっぱインパクト大事やん、初対面って」
『うん、ふふ、めっちゃ良いと思うわ』
周りは周りで騒がしくて、私たちのやりとりは誰にも聞こえていないらしい。
自分たちだけがおもろいみたいな、この感覚がなんや久しぶりで、少し気持ちが浮わついた。
『あ、私か。私の名前は、AAです』
「え？英文翻訳した？」
自己紹介ってどうやってしたらいいんか分からんくて変な言い回しになってもうたら、彼は笑いながらちゃんと突っ込んでくる。
「ほんならAな、おっけ〜」
『じゃあ、小島で！』
「おー、改めてよろしく、A」
『うん、よろしく』
これが小島との出会いで、そしてこれまでとは少し違う日常の始まりやった。
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作者名：ぽて子 | 作成日時：2023年6月11日 22時
