ヤンキーときどき少年、ところにより乙女 (ページ5)

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一足先に昨日と同じ場所に腰を下ろしたら、先輩も隣に座った。

『先輩は今日はご飯持ってきました？』

「持ってきた！」

そしたら急に無邪気な笑顔で、右手に持っていた購買のパンを掲げてくる。

大人気で全然買えへんって噂の焼きそばパンと、これまた人気のメロンパン。

『え、焼きそばパン買えたんですか！？』

「せやで～、あの激戦を勝ち抜いてきたわ」

『すごいですね！あれほんっまに人やばいですもん』

「そやねん、みんな昼飯かかってるから必死やしな」

私も一回チャレンジしたことあるけど、あれは授業終わって食堂に即ダッシュせな間に合わへんレベルやった。他のパンは全然買えるんやけどね。

私はお弁当をあけながら、先輩が嬉しそうな顔で袋を開けるのをなんとなく見つめる。
今にもかぶりつこうとするところで彼は急に動きを止めて、目だけでこっちを見た。

「A、あーってして」

一旦食べ始めるのを止めた彼が言う通りに大口を開けたら、口に突っ込まれたのは香ばしい焼きそばの匂い。

うわ、これは。

「うまい？」

『うん、めっちゃおいしいです！！』

「あ、ほんま？良かったわぁ」

先輩は満足そうに笑っているけど、そんな貴重な一口目を頂いて良かったのか、焼きそばパンを飲み込みながら不安になる。

「昨日の借りがあるからな、Aには」

もらって良かったんか聞いたらそう答えられて、返したパンをがぶりとかじった彼は「うまっ！！」と相変わらず高い声で叫んでいた。

そしてそのまま先輩が食べてるのを眺めていたとき。

……私は今更、ほんまに今更ふとあることに気付いてしまったんやけど、たぶん気にしたら負けや。

よう考えてみれば昨日だってそうやった。めちゃくちゃ食べかけのお弁当をあげたし、それを私も食べたし。

昨日その事実に気付かへんかったのは、気にするほどの精神的な余裕がなかったからや。だってめっちゃ怖かったもん、先輩。