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「きり〜つ、きをつけー、れーい」
次の日のお昼。
なんとか四時間目が終わって、昼休みが始まって少し経ったとき、私は昨日と同じようにお弁当片手に教室を出ていた。
そしていくつか階段を上がって、たどり着いたそのドア。
……なんでなんやろ。ほぼ無意識でここに来てもうた。
頭をよぎるのは昨日のあの人の姿で、ちょっと緊張しつつも、もう勢いで行くしかないとドアノブをひねる。
軽々と開いたその先には、
『……え、おらん』
末澤先輩はおらんかった。
しばらくその場でキョロキョロ見回してみても、昨日の所はもちろん屋上のどこにも彼の姿は見つからへん。
……な〜んや。緊張して損した！
知らん間に浅くなっていた息を大きく吸って吐いて、よっしゃ今度こそぼっち飯や、と意気込みながら一歩踏み出そうとしたら、
「おるで？」
『おわっ！？！』
まさかの背後から昨日ぶりの声がして、油断しすぎていたから何の色気もない声でびびったら爆笑された。
「お前ほんまおもろい、うはは！」
『……ちょ、笑いすぎちゃいます？』
「んは、ごめんごめん！」
散々笑われるからちょっと睨んだら、反省の色の全くない謝罪を並べられた。気配消して近付いてくる先輩が悪いねんて！
どうしようもなくて黙ってたら、とりあえず入れ、と軽く背中を押されて屋上に足を踏み入れた。
「なーA」
『はい？』
そんな声に振り返ると、錆びたドアを閉めた彼がにやりと意地悪そうに口角を上げる。
「さっき、俺おらんくてがっかりした？」
『んな訳ないじゃないですか』
何を言うてんねんこの人は。
即否定したらまた笑ってるけど。
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作者名：ぽて子 | 作成日時：2023年6月11日 22時
