ヤンキーときどき少年、ところにより乙女 (ページ3)

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「なぁ、名前なんて言うん？」

『……AAです』

「なんで躊躇すんねん」

『素性知られんのちょっと怖いなぁと思って』

「お前急にがつがつ来るやん。まぁええけど」

『んふふ、先輩の名前は？』

「末澤誠也」

『……あぁ、なんか、聖夜様って感じや』

「なんやねんそれ！」

『誠也様ちがいますよ？聖なる夜の聖夜様です』

「ホストやん！」

恐怖心が解けたら、なんか仲良くなってる気がせんこともない。

そして食べ終わって、いつもみたいに食後のフルーツの入ったタッパーを開けたら、今日は「いちごや！！！」

『……好きなんですか？』

一層高い声で響き渡ったから、そう聞いてみる。

「大っ好き！！」

幼い子供みたいな、嬉しさを全部顔に表したような笑い方に思わず吹き出してしまって「笑うなや」と怒られたけど、結局4個ほど差し出したのを食べた彼は満足げにニコニコしている。

「美味かったぁ～、ありがとうな、A！」

嬉しそうにその笑顔のまま言われて、3秒ぐらい経ってから名前を呼び捨てされたことに気付いてどきっとした。

多分胸キュンの方じゃなくて、やばい名前覚えられてもうた、の方やけど。

「おまえ良いやつやな」

『悪いやつに見えてたんですか？』

「ちゃうやん！そういう意味じゃないって！」

わざとそんな風に聞いてみたら大慌てするから吹き出したら、先輩はそんな私を見て不機嫌そうに眉間にシワを寄せた。

その姿を数十分前に見たら多分心臓ひゅってなってたけど、今やそれすら笑って直視できるもんな。慣れってすごい。

『先輩こそ、ぱっと見ヤンキーやと思ってました』

「ヤンキーちゃうわ！」

……なんて本人からは否定されたけど、後から先輩の噂をふと耳にしたところ“狂犬”なんて大層な二つ名が付いていることを知って、ばりばりヤンキーやん！！と叫びそうになったのは、また別の話。