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やっと食べ終えたときにはいよいよ時間がギリギリになっていて、
「A、走んで！！」
『ちょ、先輩待ってください！足速い！！』
一斉に屋上を飛び出したはずやのに、先輩のスタートダッシュが速すぎて早速距離ができている。
なんとかその背中を追いかけていたら、彼は軽い身のこなしで一段飛ばしで階段を駆け下りつつ、ちらっとこっちを振り返った。
「A次の授業何なん？教室？」
『えー、移動教室じゃないことは確かです！』
「そっか！じゃあ俺こっちやわ、じゃあな！」
『はい、また！』
当たり前やけど学年が違うから帰っていく階も違う。
そこでほんまに末澤先輩は“先輩”やったっていうことを、先輩には先輩の世界があるんやっていうことを、久しぶりにちゃんと実感した。
案外早く着いたのか、教室前の廊下に到着すると生徒も結構おって賑やかやったから、足を動かすスピードを緩めていく。
隣にさっきまでわいわい喋って一緒に走っていた先輩はもちろんおらんくて、騒がしい廊下を一人で歩くのは、なんだか少し寂しい気がした。
教室に入って自分の席に座る。
しばらくするとチャイムが鳴って、友達のとこから小走りで戻ってきた小島と目が合った。まだ数学の先生は教室に来ていない。
「あれ、Aおるやん」
『んふふ、え？そりゃおるよ』
「いつ戻ってきたん？」
『さっき』
そんな短い会話をしていたら、「遅れました〜」と謝りながら先生が入ってきて、かかった号令に合わせて立ち上がる。
“れーい、おねがいしま〜す”
……そういえば、先輩は授業間に合ったんやろか？
なんて思ってから、さすがにさっきから先輩のことばっかりな自分に気付いて、考えるんやめようと先生の声に集中した。
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作者名：ぽて子 | 作成日時：2023年6月11日 22時
