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そして無事一時間目の現代文を終え、午前の授業もなんとか乗り越えて、四時間目終了のチャイムが鳴る。
「なーA、ちょい着いてきてや」
『え、どこに？』
「まぁまぁ、ええから」
昼休みスタートでがやがやしている教室の中、隣の席から立ち上がった小島がそんなことを言ってきた。
ええからってなんや、と思ってたら、まだ頷いてもないのにがしっと腕を掴まれ、ほぼ強制的に連れ出された。
そのまま引っ張られる形で生徒で溢れる校内を歩いていく。
やのに、小島はなぜか無言やから、すれ違う人からちょっと変な目で見られてる気がして居心地悪い。
別に逃げへんから腕離してくれへん？って思うけど、どうにも言い出せへん雰囲気で困る。
廊下をうろうろして、階段を下りて、最後にたどり着いたのは体育館横の自販機だった。
「あぁ、今朝のか！」とやっと分かったら、小島はちょっと決まり悪そうに笑う。
「ほんまはな？先に買っといて、はい、って教室とかでスマートに渡したかってんけど」
『ふふ、うん』
「けどもしそれで渡した飲みもんがAの好みちゃうかったらさ、全然お礼にならへんやんか」
『あ〜』
「やから、どうしょ〜って思った結果が、これ」
これ、と未だ掴まれたままの腕がぶらりと持ち上げられて、やっと問答無用で連行された理由を知った。
正直ジュースが好みちゃうくても、お礼をくれたっていう気持ちがあればどっちでもいいと思うけど。
悩んだ結果無言で私をここまで連れてきたんやなって思ったら、……それはめちゃくちゃ可愛いわ。
「A何飲みたい？」
『ん〜、そうやなぁ……』
2台の自販機のラインナップを見比べて悩んでいたら、先に自分の分を買おうとボタンを押した(そこは遠慮せぇへん)小島が、ガゴンと落ちてきたジュースを屈んで取り出した。
その彫刻みたいな横顔をなんとなく眺めて、無駄に顔は良いんよなぁ、なんて失礼なことを思う。
『あ、じゃあ私もカルピス飲みたい』
「おっけ〜、おそろやん」
『見たら飲みたなってん！』
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作者名：ぽて子 | 作成日時：2023年6月11日 22時
