11 ページ11
ある朝、SHRが始まる30秒前。
廊下からバタバタ走る足音とカバンについたキーホルダーの揺れる音が迫ってくる。ちなみに私の隣はまだ空席である。
黒板の上にある壁掛け時計の秒針がてっぺんを指す直前、ついにその人が私の隣の席へと滑り込んできて、その瞬間にチャイムが鳴った。
「っしゃぁ〜、ギリセーフ……」
そう呟いて、軽く息切れしている彼がそろりと座ると、周りにいる彼の友達が「こじけん遅刻やぞー」と笑う。
「や、間に合ってたから！」
「お前毎日それやん」
「小島、次やったら遅刻つけんで〜」
「なんでっすか！！」
担任にまでいじられる始末で、教室にみんなが笑う声が響いたところで諸連絡が始まった。
時間割変更やらの話を聞き流しつつ、なんとなく隣を見ると不意に目が合う。
「おはよー」
『おはよう。汗だくやなぁ』
「やって今日めっちゃ暑ない？なんでこんな暑いねん！」
『小島走ってきたからやろ』
「んはは、それでしかない」
小声で話す最中にも、そのおでこの方にはじわりと汗が滲んでいる。
見てるこっちが暑くて、しゃあなしカバンから下敷きを取り出して扇いであげたら、きょとんとこっちを向いた後「いい気分やわぁ〜」なんて嬉しそうに笑った。
言うてる間に連絡も終わったのか先生は話すのを止めて、教室も騒がしくなり始めていた。
「今日なんか課題あったっけ？」
『んー、現代文の予習だけやった気する』
「まじ？やってへんわぁ〜」
『プリント提出やで？』
「それ。授業五時間目やんな？休み時間にやるわ」
確かに、通常時間割なら五時間目なんやけど。
さっき先生言ってた気すんねんな、時間割変更でなんたらかんたら〜って。なんやったっけ？
なんか嫌な予感がして、先生がいる方を向いてみる。
「あ、もっかい言っとくけど、五時間目の現代文は一時間目に変更になったから注意してくださいねー」
そんな先生の台詞に、何を言わずとも私たちはまた目を見合わせた。
「あかん、終わった」なんて諦めの顔をしてる小島に、
『……写す？』
「は、神？」
ファイルからプリントを取り出して渡したら、彼は(わざとらしく)感動で震える手で受け取って、ほんまに神レベルで崇められた。
「A、ほんっっまにありがとう！」
『うん』
「昼休みジュースでも奢るわ！」
『え、ありがとう』
「神様、仏様、A様〜〜！」
『もう分かったからはよ写し？』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 328人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぽて子 | 作成日時：2023年6月11日 22時
