ヤンキーときどき少年、ところにより乙女 (ページ2)

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『え、と、あの、ごめんなさい！』

「ん？なにが？」

『その、見すぎて……』

「あぁ！ええよ別に」

やばい殺される、と反射で頭を下げたのと同時に、思ったより声高いなぁ、と脳内の呑気な私が思ってる。

そうやってちょっと思考を飛ばしてたら、「なんでここ来たん？」なんて唐突でこれまた怖い質問が飛んできた。

『えっと、……お昼食べよっかな～と思って』

「うわめっちゃええやん！俺もまだ食ってへんねん」

こっち来て座れ、的な感じで手招きされて、隣の床をぽんぽん叩かれるから、とりあえず言われるがまま近付いて腰を下ろした。

でもこんな初対面のヤンキー(多分)の横でご飯って……と少し躊躇っていたら、その鋭い目がこっちを向いて、

「ん？食べえや」

『あ、はい……』

従うしかないです。

「お～めっちゃ美味そうやん！」

私がお弁当の蓋を開けたら隣から弾んだ声がして、でもその声の主は一向に自分のを食べる気配がないから、内心首をかしげる。

……さっき、まだ食べてへんって言ってたやんな？

それに気付いたらもう気になってしゃあなくて、しかも先輩はやたらこっちを見てくるから緊張で口に運んだ卵焼きの味がせえへんし。

思い切って、ついに聞いてしまった。

『あの、先輩は食べないんですか？』

「あー、俺今日昼持ってくんの忘れてん」

金もないし買えへん、って。

そんなことを言われたって、今の私にはこの方法しか思いつかへん。

『……いります？一口』

「え！ええの！？」

『さすがに全部はあげられませんけど、ちょっとなら』

食いさしやし、お箸もこれしかない。

やけどええんですか？って確認したら、そんなんええよ！ってめちゃくちゃ首を縦に振ってた。

……あれ？なんか案外、怖くない？

『ん～、じゃあハンバーグ半分あげます』

「まじ？！え～ほんまありがとう！」

実はハンバーグは私の大好物なんやけど、なんかもうしゃあないし。ここまで来たら、別に嫌な気もせぇへんかった。

「うまぁぁ～～！！！」

『声高っ！』

「うはは！」

晴れた空に響いたよく通る高音にはつっこまざるを得なくて、そしたら「言うようになったやん」なんてにやりと悪い顔で、でも楽しそうな先輩に私も笑ってしまった。