ヤンキーときどき少年、ところにより乙女 (ページ1)

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高校に入学して三週間が経ったというのに、私はまだ、わいわい喋りながら一緒にお昼を食べるような友達を作れていない。

別に色んな子と喋れはするけど、その中でも特別仲良しの人、というのは、全然見つかる気配もないねんなぁ。

昼休み開始を告げるチャイムが鳴ったら、何となく居心地の悪い教室から抜け出して、お弁当片手に校舎を歩いてみる。

北棟の四階まで上がったら、続く廊下にはもう実験室しかないから、人っ子一人おらんようになった。

でもふと見上げて目に留まったのは、屋上へと続く階段やった。

屋上は立ち入り禁止やって言われてるし、手すりとか所々埃被ってるのを見る限り、ほんまに使われてないんかもしらん。

そこを登ってドアノブを捻ってみたのは、ただの興味やった。

まさか開かへんやろ、と思っていたそこはいとも簡単に外へと繋がって、吹いてきた風が私の髪の毛と一緒に埃も舞い上がらせる。

ぼっち飯に最適の日当たりである屋上を見渡して、ええとこ見つけた！なんて内心しめしめと思った。

一応立ち入り禁止ということになっている場所に一歩踏み込むのは、少しの緊張とワクワクが混ざったような不思議な感覚がする。

ちょっと腰掛けられるようなとこないかなぁ、と物色して、良い感じにくぼんでいる、その角を曲がろうとしたら、なんか人影が。

思わず足を止めて、恐る恐るその先を覗いてみる。

『……え、』

声が漏れてしまって、慌てて両手で塞ぐ。

そこにいたのは、三年生の色のスリッパを履いた、めちゃくちゃ気持ち良さそうに寝ている男の人やった。

だるだるに緩いネクタイと、ボタンの開けられたブレザーからは、明らかにちょっとそっち系の雰囲気が読み取れる。そっち系て、あんま関わらん方が良い系な。

……やのに近付いてしまった私は、一体何なんやろう。

恐る恐るその人の目の前にしゃがみこんで、じっと顔を観察してみる。ほんで結構整った顔立ちやと気付いた。

なんでここにおるんやろう。ていうかいつから？お昼はもう食べたんやろか？

「……見すぎやろ」

『ぉわっ！！！！』

「おぉ、どっから出たんその声」

面白そうに呟いた目の前の方。さっきまで寝ていたはずのその人。

思わずめちゃくちゃ後ずさってしまったけど、子犬のようなぱっちり開かれたくりくりの両目は、確かに私を捉えている。その視線にブレがなさすぎて、肝っ玉の小さい私が縮み上がるのも当然やけど。