・ ページ43
side：K
※嘔吐表現あります。
・
救護室の簡易ベッドに寝かせようとした時､ふと僕の服を掴む力が強くなったように感じた。
r「けん……と……く」
その弱々しく､絞り出したような声で全てを察する。
一旦そのままベッドに座らせ､用意していたビニール袋を差し出す。
r「うっ……はっ……げえぇぇぇ……」
ばちゃばちゃと音を立てながら､それはビニール袋を重くする。
緊張が解れたのか､今度は上手く戻せていて､ホッとした。
「上手やね､よしよし。頑張れ､頑張れ」
「全部げぇしていいからね」なんて言わなくても､それは止まることを知らないみたい。
r「んぐっ……おえぇぇぇ……」
「頑張れ」くらいしか掛ける言葉も見つからず､背中を摩ってあげることしかできひん自分にやるせなさを感じる。
代わってあげたい。
・
きっと流星くんがこんなに弱った姿を見るのは初めてなんだ。
プロ意識が高くて､弱音を吐くところも見たことがない。
いや､見たことがないのではない。
僕が気付いてあげられなかっただけではないのか。
いつも強く在る人の弱いところを見続けるのはしんどくて､ひたすらえずく君の隣､僕は唇を噛み､俯いた。
・
どれくらいの間､そうしてしまっていたんやろう。
頬にとても冷たいが､掌が触れる感触を覚え､顔を上げた。
水分量の多い､潤った目と視線が交わる。
そして､少しだけ口角を上げて､こう言った。
r「ずっとそばにいてくれて､ありがとう。ぼくはもう､だいじょうぶ」
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 293人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
toki(プロフ) - さくらさん» 諸事情がありまして ずっと投稿できず 申し訳ございませんでした(;_;) 次ページの方にて公開致しましたので もしまだ読んでくださっているのでしたら ぜひお読みくださいませ (2023年4月7日 18時) (
レス) id: 904b96111b (このIDを非表示/違反報告)
ひなちゃん - だいちゃんが、熱だして甘えん坊になるのが見たいです!このお話大好きです!よろしくお願いします!! (2022年10月7日 9時) (レス) @page50 id: a7a726468f (このIDを非表示/違反報告)
さくら(プロフ) - tokiさん» ありがとうございます！ 道枝くんが仕事で嫌なことが続いて病んじゃって自傷するお話が見たいです！難しいと思いますがよろしくお願いします！ (2021年8月17日 13時) (レス) id: c878c6a6b2 (このIDを非表示/違反報告)
toki(プロフ) - さくらさん» 書けますよ！ 病状やメンバーなどのご要望をくださると有り難いです(;_;) (2021年8月16日 23時) (レス) id: c3554eec3c (このIDを非表示/違反報告)
toki(プロフ) - みじゅちぇさん» 投稿もレスも遅くなって ごめんね いつもありがとう ちゅき(;_;) (2021年8月16日 23時) (レス) id: c3554eec3c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：toki | 作者ホームページ：https://lit.link/toki087
作成日時：2021年1月18日 16時
