拾肆 ページ30
「そのふぇあというのは知らないが、……助ければその分の対価はくれる、そういう解釈でいいのかな?」
「…え、ええ。」
まさか食いついてくれるとは思っていなかったので、ちょっとびっくりした。
「その話、のった。」
ぽつりと呟くと、私の前に出て二人に立ちはだかった。
「取り込み中失礼する。加州清光と大和守安定だったな。
少しの間耳を貸せ。」
いつも以上に緊迫とした空気に変わった。
なんだと…っ!?あの長義が、マジになっている。
本気モードの長義くんなら、喧嘩を取りやめて二人が早々に演練場へと帰ってもらうのは容易いはずだ。
しかし、その対価に彼は何を望むつもりなのか今それがかなり怖い。
(対価……一生こき使われるとか…!?)
ぶんぶん首を振って、今ならまだ間に合う。
「ちょ、長義!やっぱり今の話は_」「見つけたぞ!こんなところにいたのかっ!!」
私が止めに入ると同時に、ずかずかと見覚えのある男が乱入してきた。
「うぇっ、長谷部?なんで貴方がここに!?」
「ああぁ!!俺を覚えてくれていたのですね!俺がいない間、大丈夫でしたか?どこもお怪我は?」
彼は私の声を察知すると先程の威勢はどこに行ったのか、そして二人の事の方が重要のはずなのに、
嬉しそうに私に駆け寄り、なぜか涙目である。
か、歓喜の涙ってやつ……だろうか……?
「あ、ありがとう。私は大丈夫よ。」
彼の忠義に関してはとても信頼できるが何処と無い狂気に似た恐ろしさを感じる。
必死に興奮状態の彼を少し落ち着かせ、本題にうつさせる。
「それで、長谷部はどうしてここに?
ここは立ち入り禁止なのよ?」
「そうだったのですか?!申し訳ございません…!
俺としたことが、くっ!」
なんか本当に悔しそうな顔をしていた。
「そんなこと言って、実は分かってて入ったんじゃない?」
「貴様が口を出すな!隊長を任せられたが、俺は貴様らの面倒をいちいち見ている暇はないんだ!
帰るぞ!」
加州が怪しげな顔でそういうと、悔しそうな顔はどこにいったのか、今度は怒る。
大層おかんむりらしい。
「長谷部もそう言ってるわけだし…、帰った方がいいんじゃない?」
「貴方様もそう思いますよね!?」
「いや、どうして感動してるのよ。」
それに貴方様って、私はそんなに偉くないのだけど…。
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作者名:沙恵燬 | 作成日時:2019年2月1日 1時