ただの迷子に審神者は務まらない！【刀剣乱舞】 (ページ5)

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伍ページ5

「これは…なんだ？」

「林檎ジュース」

「…林檎？」

「ええ。」

私は彼を見ずに演練場にいる刀剣男士の奮闘を見ながら言った。

「……。」
フード男から睨まれているのが見なくともわかった。

「まあ次回から別のを買ってあげるから、今日は私のおすすめの林檎ジュースを飲んでくれない？」

何がいいかなー、とフードの男の顔を見ずに独り言を呟いた。

「飲み物は要らない。
…そもそも何故俺が明日も来る思うんだ。」

林檎ジュースのストローから口を離し、彼を見た。
「もうここへは来ないの？」

「…二度と来ないとは一言も言っていない。」

「……貴方って照れ屋さんなの？」
「違う。」
すぐ否定された。

…余計に照れ屋さんに感じるのだけど。

私達はその後も黙って観戦した。

「…っ。」

しかし、いつも感じる。

彼はとある人物を見かけると、雰囲気が変わる。
ちらりと隣を見れば、やはりいつもと同じように唇をきつく噛んでいた。
でも、それは恨みというよりは悔しいに近いものだった。

(…本当にわかりやすい。)

山姥切国広という刀。

彼が出ているときは絶対に殺気に近いものを放っていた。

聞かずともそれがわかったのはちゃんとした理由がある。

そもそも演練場は本物の歴史遡行軍とのシュミレーションを兼ねて、六振りまでの部隊と決まっており審神者同士の率いる刀達の戦いだ。
最大、六振り対六振りの刀を戦いを見ることが出来るのだけど……

そんな少人数による結成なので、彼と会話をせずとも誰を睨んでいるのかすぐに分かった。

(でもそんなに悪い刀だったっけ…？)

私が最初に出会ったある本丸の山姥切国広は性格がひねくれていてぶっきらぼうだったけど、それでも温かみのある優しさを彼は持っていた。

あんな彼が恨まれるほどの事をしでかしたなんて到底ありえない…、と思う。

(でもまあ、＿)

こういうことは放っておいてあげた方がいいだろう。関係のない女がしゃしゃり出るなんて、相手から見ればいい迷惑だ。

そう思って絶対に口にはしないで黙って観戦した。

今日も最後まで見終えることができ、ぐっと背伸びをする。

「よし、帰るか！」

「…。」

私を置いて、フードの男はどこかに歩いていく。

(……やっぱり変な人。)

結局、あの林檎ジュースはずっと彼の手の中にあり…最後まで口に入れようとしなかった。かと言ってゴミ箱に捨てるような持ち方でもない。

…意味がわからなかった。