短 ページ21
予想外れ
「長義くん！君はあの女の子を色目で見ているのね！！」
「……。」
何を言うのかと思えば無邪気に笑いながら的外れなことを言った。
俺が呆れて言葉も出ないでいると、彼女は当たったと思ったのか、えらく興奮していた。
「驚いて声も出ないようね！
まあ、あの子は可愛いし惚れる気持ち、わからなくも」「何を言っている。相手に悪いがあの女性は俺の好みじゃない。全く持って見当違いだ」
彼女が言い終わる前にすかさず否定すると、彼女はポカンと口を開けて止まった。
「……へ？」
「……。
だいたい、俺には心に決めた女性がいる。これ以上変な憶測は辞めてもらおうか。」
今まで"刀"だったからこそ分かっていなかった面もあるが、こういうことを自分で言うのはなんだか恥しく感じる。自然とフードを深くかぶり、顔の熱を隠した。
刀の時にはなかったこの感覚
人の体を得ただけだというのに、こんなにも違うのかと改めて実感した。
…まあ、それだけではないのだろうけども。
＿一方、目の前の彼女は半ば驚き、俺が怒っていると思ったのか気を悪くしないでと言う。
「そうだったの？ご、ごめんね。
……さっきの話はなかったことにしてくれる？」
「…？
いや、構わないよ。」
その素振りは、恋愛に関して過去に何かあったかのように思わせる言動で、間違ったことが余程嫌だったのか"なかった"ことにしてくれと言う。
「そっかぁ、…長義くん。…好きな人、いるのね。」
独り言なのだと思いつつも、試合を見る彼女を横目に少し躊躇いもあるが、ああ。と答える。
へぇー…という全く興味のなさそうな軽い返事が帰ってきたと思えば、突然素っ頓狂な声が廊下を響き渡らせた。
「はぁぁああ！？！？」
「っ！？」
前触れもなく叫ぶなと叱咤しようとするも、その前に彼女に先を越された。
「ちょっと待って！！
いるの！？！？長義に好きな人がっ！？」
俺の肩を掴んで揺らしてくる。
この女は怪力なのもあって、気持ち悪くなってきた。
あまりに酷いので、先程よりも興奮状態にある彼女の腕を掴む。
「何度も言わせるな！さっきからそう言ってるだろう！」
恥ずかしさなどとうに失せていた俺ははっきり宣言して、
とにかく彼女を落ち着かせることに専念した。
「そ、それでその人ってここで働いてる人よね！？」
俺を揺さぶりはしないが今にも俺に飛びかかりそうな勢いなので数歩距離をとった。
が、その分彼女が寄ってくるので意味は無い。
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作者名：沙恵燬 | 作成日時：2019年2月1日 1時
