短編・Ifヤンデレ ページ3
淀んだ目
そんな私の心情を分かってないのか、彼は銀髪の髪を揺らして青い宝石のように美しい目を細める。
「…せっかく買ってきたんだ。少しだけでもいい。飲んでくれないかな？」
そんな美しい青年の頼み事も私はききたくなかった。
「いらない」
「…っ、
…お前は一体何が気に食わないんだ」
彼はついに頭にきたのか、乱暴にそれを放り投げて私を押し倒した。
何が気に食わないと言われても困る。
私は特に興味がないんだから。
そんな虚無感を抱いて彼を見つめていると彼は一層眉をひそめた。
「俺はお前のモノだ。俺の全てをお前にやるといっている」
また変なことを彼は口にする。
「なのになぜいつも俺を拒む…っ！お前がこんなにも愛おしいのにどうして分かってくれないんだ！」
またこの目だ。この淀んだ目。
私の首元に顔をうずめてしきりに唱える。
「好きだ主。好き、好き…はあ、主。
主、主、…俺だけの主。愛してる。
君を見る度に胸が苦しくて抱きしめていないと動悸が治まらなくて、離れた後はいつも君のことしか考えられない。言葉なんかじゃ伝えきれないぐらい君が愛おしい。
主、俺を求めろ。俺がいないと生きていけないとその口で言え」
私の首を荒々しく舐めたり噛んだり、色っぽさを含んだその独り言はもはや異常とも言える言葉を紡ぐ。
「好き、俺の主…っ、ん、好きだ」
「っ」
ガリッと一層強い痛みが首にくる。
「首が痛むのかな？…可哀想に」
やってきたのは彼だと言うのに、痛むその箇所を彼は撫でた。
暫く耐えていると彼はようやく落ち着いたみたいで首から離れた。
「怖がらせてしまったのかな？
……さっきは怒鳴って悪いと思ってるよ。それでも俺を好きでいてほしい。
主だって十分悪いはずだ。いくらアイツらの用意するものでも全く食べないのは悪いことじゃないかな？
食べないのは死ぬことと同義、そうだろう。
最近、どんどん身体が細くなっていくからこっちは不安なんだ。
主、嫌いにならないでほしい。
主が先に死ねば取り返しがつかないだろう。
…生憎俺はこんな世に君を放置するつもりはない。
こんな世界、君が悲しむだけだ。まだ俺のもとにいる方が君だって嬉しいだろう？
ああ、俺を嫌いにならないでくれ主」
長々と文脈がつかない言い訳を並べて仕切りに「嫌いにならないで」と彼は私を抱きしめていい続ける。
嫌いも何も貴方のことは好きじゃないのに…プラスもマイナスもないだろう。
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作者名：沙恵燬 | 作成日時：2019年11月25日 2時
