中〜夢主ちゃん、海に行く〜20 ページ18
「っはぁ…ん、
大将、恥ずかしいのか?」
「も、もういいでしょ?!」
穴があったら入りたい気分だった。
自分でも顔に熱が集まっているのがわかるぐらいの顔を冷たい指が撫で、…首から薬研の顔が離れた。
「_大将」
ふと、真正面に顔を向き合うと彼は目を曇らせた。
「その顔もあいつに見せたのか?」
「…あいつ?」
心当たりがないために聞き返すと、彼は元の顔に戻る。
ふっと自嘲気味に笑う
「いや、もうどうでもいい。…大将、このまま俺に」
「子犬のように主人を舐めてご機嫌気取りか?薬研藤四郎」
言いかけた言葉を飲み込んで薬研はゆっくりと私から離れ立ち上がると、鋭い目つきでその声の聞こえた方向をみた。
私もつられてそっちを見ると、長義が颯爽と佇んでいる。
…彼の青い目と銀髪の髪に白い肌が一層後ろに広がる海とマッチングしていた。
絵になるなあと惚けてしまうほどだったが、隣で禍々しい威圧がはっと我にかえさせる。
その横顔こそ無表情だが、物凄く怒っていた。
「これは俺っちと大将の問題だ。部外者は引っ込んでくれるか?」
体格の差があるにも関わらず、強者ならではの雰囲気を匂わせる。
なぜこうも争いごとになりそうなのかと言いたくなるが、二人の合間に入って止めるにも今は"周り"がいる。
特に薬研の審神者の彼女がいる。彼女に傷一つでも負わせれば、大変だ。
……ここは少しさがって様子を見るほうがいいのかもしれない。
ゆっくり起き上がって、少しずつ私は後退るが薬研が見えていないはずなのに瞬時に私の腕を掴む。
じろりと薬研がこちらを振り向くと、さっきの無表情ではなく優しい笑みを浮かべていた。
「ちょいと待っててくれ。すぐ終わらせる」
「…」
何も言わせまいとするその笑みに私は何も言えなかった。
彼は…いつからこんな風になったのだろうか。
誤魔化すような無理に繕った笑み。
私に冷たい時はあっても、でもこんな表情をする少年じゃなかった。
「大将は俺が守る。だから俺の側にいてくれるだけでいい」
…その笑顔の裏に一体何を隠しているの?
何かを変えようとして口を開けても、前のように素直な言葉を伝えられなくなっていて…言い出せない。
あらゆる語句が抜けていって私のため頭は無知蒙昧に陥っていく。
彼に対して最も適切な言葉が出てこない。
ふいに薬研の後ろにいる長義と目が合うと…彼は私の次の行動を伺っているのかじっと目を注いでいた。
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作者名:沙恵燬 | 作成日時:2019年11月25日 2時