玖拾捌 ページ8
*
「おや、それではあの時部屋にいたのですね。
……なのに何故、見ぬふりをしたのです?
あんなに、口を開けば主、主としっぽを振っていたのに……それに」
『あなたは朝一番に、郵便受けを見に行っていますね?何故無視をしたんです』
ぐ、と顔を歪める長谷部。
言いづらそうに口を開きかけて、すぐ閉じた。
「おいおい、無視はいけねーなぁ。
これだけ数が居て、言い逃れはできないぞ」
「それに長谷部さん、主さんに手入れ部屋の存在を教えていませんでしたね。
何故ですか?」
出陣組から和泉守と堀川が出てくる。
それに対するように、状況が把握できて満足なのか他の4人は部屋を出ていった。
そして怪我の酷い青髪の小柄な少年とそれを支える白い服の青年も、大倶利伽羅が離されればそれでよかったのか、去っていく。
私も正直どうでもいいと言うか、私をコイツらのいざこざに巻き込まないで欲しいのが本音だが……流石にそれは言い出せそうもない。
私のその気持ちを察し取ったのか大倶利伽羅が『お前の話をしているんだぞ』と背中を押した。目の前には蹲踞の長谷部。
目線を合わせる為にしゃがむと、長谷部越しに、その後ろに座っている金髪の少年─確か私の記憶が正しければあのいっぱいいる薬研達兄弟の1人……博多だったか?─と目が合った。何か言いたそうにしているので手招きをして呼ぶと、控えめにこちらへやって来る。
「主、あんね」
「はい、どうかしましたか?」
「長谷部は別に悪い奴じゃないけん、その、怒らんといて欲しいんよ」
……う、初めてこいつとしっかり話したがなかなかに訛りが強いな。当然私は標準語でしか育ってきてない。いつか分からない単語が出てこないことを祈っておこう。
「えぇ、分かっていますよ。
ただ、何か言おうとしてたので気になっただけで」
「怒ってなかと?じゃあ長谷部もちゃんと言わんと駄目ばい」
よかよか、と満足そうに笑って長谷部の肩をポンポンと叩く。周りも特に口を挟む気は無いのか静かに見守っている。
「……その、手入れ部屋をお伝えしていなかったのは確かに意図的ではあるんですが……資材がほぼ底をついていたでしょう。
だから、お伝えしない方がいいかと。
あまり主に関わってくる刀剣もいないと踏んでいたので、この程度なら霊力で賄っていただいた方が、無理な出陣や破壊などに繋がらずに済むかと」
「……そうなんですか?」
正直ここの状態をまだ把握しきれていないので聞き返すと、和泉守が頷いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1828人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
やよ - 更新待ってます！ (2022年1月8日 15時) (
レス) @page11 id: f3622d769a (このIDを非表示/違反報告)
東雲 - とても面白い作品で読み込んでしまいました！続きを楽しみにしてます！ (2021年6月13日 20時) (レス) id: 3d369926d3 (このIDを非表示/違反報告)
Hikaひかり(プロフ) - 途中で終わりとなっていてすごくショックです…続きが読みたい…！ (2020年12月19日 18時) (レス) id: 6f70194681 (このIDを非表示/違反報告)
黒豆粉 - 更新楽しみに待ってます。応援しています。頑張ってください！(^-^) (2020年9月25日 22時) (レス) id: a216a85358 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
