玖拾肆─その頃本丸では─ ページ4
*
『大倶利伽羅が朝餉の後、三条へ連行された』
その話は、現場を目撃した博多藤四郎により瞬く間に本丸中へと広まった。
燭台切や鶴丸といった同室の刀剣達は勿論、まだ手入れが済んでおらず重症の太鼓鐘貞宗も、同じ刀派の物吉貞宗に支えられ、三条派の部屋の前に押し掛けていた。
しかしその部屋が開かれることはない。
それもその筈、大太刀で大柄の石切丸がその部屋の前に座り込み道を塞いでいるのだから。
「中に伽羅ちゃんが居るはずなんだけど」
そう燭台切が問い詰めるも、彼は『主と出かけているよ』の一点張り。それを裏付けるように、確かに審神者は今この本丸を出ていた。
しかし、離れた所からずっとその様子を伺っていた博多は知っている。
連行された大倶利伽羅は、それ以降この部屋から出てきていない。
つまり、彼はこの部屋の中に今も居るはず。
……ならば、あの審神者と出掛けたのは誰たい?
その疑問が解決できない以上、三条を、いや、それ以前に通せんぼをしている自分の数倍もの体躯をどうにかすることはできない。それは博多自身も、また燭台切らも理解していた。
ひとまず粟田口派を初めに、短刀やかつての仲である日本号にもこっそり伝え、広めるよう頼んだ、が……力技で押し切るような刀剣は皆戦場に出ているのもあり、その突破口は開かれぬまま、かれこれ半刻近く問答を続けている。
そんな中、1つの足音が近付いてくる。
「……長谷部」
こりゃ驚いた、と呟く鶴丸に目もくれず、その刀剣は石切丸の前で止まる。
君も大倶利伽羅に用事かい?と微笑む石切丸を、長谷部は否定した。
「いや、俺の用があるのは小狐丸だ。
本丸中を駆け回ったが居ないようだったからな。この部屋にいるだろう、出せ」
ほぅ、と石切丸の余裕の微笑みが、崩れた。
「いないのか?そんな筈はない。
『主と出掛けている訳でもあるまいし』」
返答を待たずに、何が目的だ、と続けた。
折れたのは、石切丸の方だった。
「どうするんだい」
「何、今回のことに関しては俺達は無関係なのだから、大人しく開ければいいさ」
閉ざされていた襖が、中から開かれた。
開けたのは三日月。そうだねと石切丸が道を開けると、部屋の中では大倶利伽羅が布を噛まされ、岩融に押さえられていた。
「まぁ、じきに奴らも戻ってくるだろう。
その時にちゃんと彼奴から説明をさせる故……ひとまず中へ入れ。
……勿論。長谷部と、そこの博多もな」
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やよ - 更新待ってます！ (2022年1月8日 15時) (
レス) @page11 id: f3622d769a (このIDを非表示/違反報告)
東雲 - とても面白い作品で読み込んでしまいました！続きを楽しみにしてます！ (2021年6月13日 20時) (レス) id: 3d369926d3 (このIDを非表示/違反報告)
Hikaひかり(プロフ) - 途中で終わりとなっていてすごくショックです…続きが読みたい…！ (2020年12月19日 18時) (レス) id: 6f70194681 (このIDを非表示/違反報告)
黒豆粉 - 更新楽しみに待ってます。応援しています。頑張ってください！(^-^) (2020年9月25日 22時) (レス) id: a216a85358 (このIDを非表示/違反報告)
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