佰拾─本丸 大広間─ ページ20
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どよめく刀剣達の最前で黒板を覗き込んでいた今剣は、顎に手を添え「むむむ……」と黒板に顔を寄せる。彼の視力をもってその文字が見えないはずはないのだが、その奥の真意を見透かすように彼は眉を寄せた。
そんな小さき相棒の様子に首を傾げる岩融。ぬっとその身を屈め、同じく黒板を覗き込む。
「どうかしたか、今剣」
「……なかなか『こしゃく』なことをするじゃないですか。さにわ」
「というと」
「ようするに、さにわはせきにんのがれをしたいってことです。おそらく、あのおなごがさにわの『任』をおりたさいに、このほんまるは『かいたい』されるのでしょう。みたところ、かのじょはさにわしがんのものではありません。あたりまえに、こんなほんまるのさにわなどしたくないはずです。しかしそれをわれわれへつげるには、あまりに『ふう』がわるい」
気付けばいつの間にか、皆が今剣の言葉に聞き入っていた。
彼の言いたいことを汲み取った岩融がハッと目を見開く。
「……我々が本丸解体を望むから、審神者をやめると言えば不自然ではない」
「ええ、『りがいのいっち』をさかてにとられています。ぼくはべつに、ここにおもいいれなどないのですが……こむすめのおもわくどおりにうごいてやるのも、しゃくです」
黒板に添えられていた、丸いシールを手に取る今剣。
現在『本丸解体』の項目に1枚だけ貼られたシールを一笑に付し、彼は1枚を『本丸存続』に貼り付けた。
「いわとおしは、どうしますか？」
「そうだなぁ……今剣に乗じるのも悪くないだろうが、しばし保留にしておこう」
無理強いする気はなかったようで、断った岩融に「そうですか」と呟いたかと思えば彼はシールの台紙を元の場所へ戻した。
そのまま朝餉の席へ向かった2振りに、ようやく場は流れ解散の雰囲気となった。
朝餉はとうに終わり、人が掃けた黒板の前に歩み寄る者があった。
「なぁ国広、なんで主はわざわざ匿名なんてかっこ悪ぃことしてんだ？」
「うーん……主からの反感を恐れて、意見しない刀剣を減らすため、とか」
「じゃあ、俺らにこんなん要らねえよなあ」
そうだね、とにこやかに頷いた堀川は黒板下のチョークを手に持ち自ら『堀川国広』と黒板へ記名した。
「兼さんも書く？」
「あったりめーだろ、貸せ」
すぐ側に『和泉守兼定』と記し、満足気に笑った2振りはそっと大広間を後にした。
「さぁ、行くぞ国広。思惑なんて関係ねぇ……この本丸は、今手放すには惜しすぎるだろ」
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やよ - 更新待ってます！ (2022年1月8日 15時) (
レス) @page11 id: f3622d769a (このIDを非表示/違反報告)
東雲 - とても面白い作品で読み込んでしまいました！続きを楽しみにしてます！ (2021年6月13日 20時) (レス) id: 3d369926d3 (このIDを非表示/違反報告)
Hikaひかり(プロフ) - 途中で終わりとなっていてすごくショックです…続きが読みたい…！ (2020年12月19日 18時) (レス) id: 6f70194681 (このIDを非表示/違反報告)
黒豆粉 - 更新楽しみに待ってます。応援しています。頑張ってください！(^-^) (2020年9月25日 22時) (レス) id: a216a85358 (このIDを非表示/違反報告)
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