佰玖─本丸 大広間─ ページ19
＊
朝餉に起きてきた刀剣達は、いつもと様子の違う大広間に思わず足を止めた。
内部を確認して足を止めた者はたちまちに入口を塞ぐほどに増え、後続の短刀や脇差達は実情を窺い知れぬままに異様な空気感だけをその肌に感じていた。
「なんだ、皆して立ち止まって」
「いりぐちでたちどまられたら、なかにはいれないじゃないですか！ あさげをたべるのならはやくすすんでください。ほらほら」
それを最後尾から拓いたのは、本丸の中で飛び抜けて上背のある岩融と、その肩に担がれた今剣だった。
そんな2振りを避けるように道を開ける者達に、不思議そうな顔をしながら岩融は入口へと足を進めた。
好奇心が抑えきれなかったのか、乱や博多、鯰尾といった比較的小柄な者が多い粟田口派の面々が、掻き分けられた人波の後ろから顔をのぞかせる。
するとまず初めに視界へ飛び込んできたのは、2振りの刀剣だった。
「あれ、長谷部さんと日本号さん……？」
思わず名を呟いた拍子に、今まで人混みの中で静観していた筈の薬研、宗三が隙間から顔を覗かせた。十分すぎるほどに覚えのある、名の並びだったからである。
「何をしているんです、あの2人……」
大広間の中央を陣取った長谷部に日本号。その中央には、おおよそ障子半分くらいの大きさの黒板が立てられていた。
「はせべ、にほんごう。なんですか？ このこくばんは」
目線が高すぎたのか、ぴょいと岩融の肩から飛び降りる今剣。そして2振りの元へ近寄ったかと思えば、皆が遠巻きに見つめていたそれに顔を寄せた。
「おや、これはさにわのかいたものですね。あいもかわらず、『いぬのまねごと』ですか。なになに……『ほんまるそうぞく』、『ほんまるかいたい』？ なんなんですか、これ」
「今回は、俺が直接賜った主命ではないから詳しいことは知らん。おい、日本号」
にべもなく言い捨てた長谷部は、睨む様に隣を見やった。だらしなく足を崩した日本号は、そこでやっと「これ、俺が言うやつ？」と面倒くさそうに息をつく。
「……まぁ、今剣が読み上げたようにこの本丸全体に関わることなんで、聞いといた方がいい話なのは分かっただろーから中入れよ」
後ろで背伸びをしていた短刀から順に、概ね黒板周りに動ける者が集まった段階で、日本号は欠伸混じりに口を開いた。
「まぁ簡単に言うと、今から本丸全体に決を採る。内容は黒板の通り。負傷して出られない奴は代理でもいいから、できるだけ多くの意見がほしい、とのことだ」
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やよ - 更新待ってます！ (2022年1月8日 15時) (
レス) @page11 id: f3622d769a (このIDを非表示/違反報告)
東雲 - とても面白い作品で読み込んでしまいました！続きを楽しみにしてます！ (2021年6月13日 20時) (レス) id: 3d369926d3 (このIDを非表示/違反報告)
Hikaひかり(プロフ) - 途中で終わりとなっていてすごくショックです…続きが読みたい…！ (2020年12月19日 18時) (レス) id: 6f70194681 (このIDを非表示/違反報告)
黒豆粉 - 更新楽しみに待ってます。応援しています。頑張ってください！(^-^) (2020年9月25日 22時) (レス) id: a216a85358 (このIDを非表示/違反報告)
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