玖拾弐 ページ2
*
「A、迎えが遅くなって申し訳ないわね」
「いえ、滅相もないことでございます。母上」
……母上？ と横で小さく大倶利伽羅が呟くのが聞こえた。
というかこれはもう、絶句と言った方が正しいんじゃないだろうか。
まぁ、それもそうか。こんなに華やかな着物……悪く言えば『いつの時代の人だ』という程の身なりをしたこの女性が、竹刀をぶん回す私の母だなんて。てか本当に、この現代で『母上』とか、本当にいつの人だよ。
政府の応接間に通された私達の目の前には正真正銘の私の母と、見覚えのない……恐らく政府の人間と見て間違いないであろう男性が対面するように座っていた。
私が下座側に片膝をつくと、大倶利伽羅も倣うように蹲踞で私の傍に座り、頭を下げた。この辺りは流石その時代を経た刀剣と言うべきか、作法は特に気に留めずともよさそうだ。よかった。
しかし母上……母は私の傍に控える大倶利伽羅を見て、眉を顰めた。
うーん、やっぱり駄目だったか。長年この家に過ごしてきたのでこの後に何を言われるかはしっかりと把握している。
「こん……な薄汚く野蛮な、人殺しの男達とうちの娘を同じ屋根の下暮らさせていたなんて……これで娘が怪我の1つでもしていたらと思うともう……！」
嘆くように言い捨て、『今すぐに娘を解放しろ』と政府の方に詰め寄った。
「お、お母様落ち着いて下さい！ 御覧の通り、娘さんには傷1つなく……この大倶利伽羅も、娘さんの護衛の為付き添っているに過ぎません」
弁明をするように母を宥めるが、それはほぼ効果がないだろう。
なぜならこの母親、過剰なまでに私に過保護なのだ。いや、これは最早過保護の域を超えている。
成人をしているのに未だ1人で買い物や道楽などに出かけたこともない、言ってしまえば家と学校以外ほぼ軟禁状態の私。
そしてその生活もそこそこに制限があり、常に『雅』だの『女らしく』だの私に説き、習い事は花にお茶。母も名家とは言わずもそういった家の出なので特に作法、身なり、口調に関しては厳しかった。
唯一、私が進んでやっているものは剣道の道にいる父からそれを習っているだけ。剣道も母からすれば辞めさせたいのだろうが、何分自分の旦那から習っているものだから言い出しづらいのだろう。今のところは特に咎められていなかった。
「護衛？ そんなもの信用できるとお思いですか。
今でも見えないところに傷があるかもしれない、誘拐しておいて偉そうなことを仰らないで下さい」
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やよ - 更新待ってます！ (2022年1月8日 15時) (
レス) @page11 id: f3622d769a (このIDを非表示/違反報告)
東雲 - とても面白い作品で読み込んでしまいました！続きを楽しみにしてます！ (2021年6月13日 20時) (レス) id: 3d369926d3 (このIDを非表示/違反報告)
Hikaひかり(プロフ) - 途中で終わりとなっていてすごくショックです…続きが読みたい…！ (2020年12月19日 18時) (レス) id: 6f70194681 (このIDを非表示/違反報告)
黒豆粉 - 更新楽しみに待ってます。応援しています。頑張ってください！(^-^) (2020年9月25日 22時) (レス) id: a216a85358 (このIDを非表示/違反報告)
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