伍拾肆─_____─ ページ9
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厨に足を入れて、自然とその足は止まる。
中に居たのは、この本丸を誰よりも長く見てきた彼。
「……どうかしたのかい?」
その圧倒的な負の圧に思わず身構える。
「なに、いい提案があるのでな。まぁ、寄れ」
「……というと?」
言われた通り、恐る恐る彼の近くに寄る。
「何をそんなに警戒する。
今日の夕餉に審神者が来ることは?」
「既に聞いているよ。
君ともあろう刀剣が、珍しい計らいをするものだね。」
警戒、という言葉に若干の威圧を混ぜながら目を覗き込まれる。
逸らせない、全て彼には見透かされている。
「何、今剣からの提案故だ。
それに。今まで審神者に何をされてきたのかも忘れ、ほんの数刻のよき行いで奴に感化された者もおるようだしな」
はっはっは、と笑う彼。
目は全く笑っておらず、相変わらず僕をじとりと見つめている。
まるで僕が、そうであると言っているようだ。
どろり、と払拭したばかりの審神者に対するどす黒い感情が胸に垂れ込む。
「それで、要件は?
手短に頼むよ、仕込みがあるからね」
きっと彼のこの穢れた神気のせいだろう。早めに、追い出さないと。
「まぁ、そう急くな。
今日、審神者に出す料理。
お前にとって毒は酷だろうから……神気を混ぜておけ、大量にな」
「……それはまた何故。神隠しでもするのかい?」
自分で言っておきながら神隠し、という単語に体が反応する。
彼が神力を僕に流しているんだろう、黒い感情が心を覆っていく。
僕の中から急激に何か、熱のようなものがが奪われていくのをどこか客観的に感じた。
「まぁ、簡単に言うとそうだな。お前の神域に連れ込み、隠してしまえばいいさ。
見たところ、審神者と気心も知れているようだし……疑われることはないだろう。
思い出せ、今まで受けた審神者からの屈辱は……手入れなどで直るものではないだろう?」
どぷり。急激に思考が奪われていく。
何が、奪われたんだっけ。
僕は、なんだ?
唯一溶け残ったのは、『審神者』に対する憎しみ。
「……あぁ、任せてよ」
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朔夜(プロフ) - 無花果(Na-na )さん» こんばんは、コメントありがとうございます!率直な愛の言葉、とても心に響きました。本当に嬉しいです、ありがとうございます!今後ともお楽しみにしていただきたいのですが超ユル更新なので、寒くなる前に服は着て足も崩して下さいね笑 (2019年7月3日 0時) (レス) id: 959b48d95f (このIDを非表示/違反報告)
無花果(Na-na )(プロフ) - 好きです。(突然の告白)とっても面白いです、全裸で正座して更新待ってます(真顔) (2019年7月2日 20時) (レス) id: 0e478908d2 (このIDを非表示/違反報告)
朔夜(プロフ) - チランコス☆さん» こんにちは、コメントありがとうございます!まだ断言はできませんが、三日月さんはもしかしたら長くいたせいで人のいい部分も知ってしまったので迷っているのかもしれませんね。長谷部さんは過去に色々やらかしてるのでその辺もお楽しみに今後もよろしくお願いします! (2019年6月30日 11時) (レス) id: 959b48d95f (このIDを非表示/違反報告)
チランコス☆ - 続きが物凄く楽しみです!!!!!!!!!!!前作から見ていましたが、やはり見入ってしまいます…!!やはり審神者vs三日月(三条派)なのでしょうか!?長谷部が三日月派か審神者派かも気になります♪ (2019年6月30日 7時) (レス) id: 381a12205a (このIDを非表示/違反報告)
朔夜(プロフ) - あふるさん» 前作からのご愛読、本当にありがとうございます!私の私生活や審神者ライフが安定しないせいでこの小説も亀更新を極めているにも関わらず、長らくの応援ありがとうございます!始点と終点以外ノープランな小説なので今後も展開を楽しみにしていてください! (2019年6月15日 16時) (レス) id: 959b48d95f (このIDを非表示/違反報告)
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