陸拾漆─堀川国広─ ページ22
*
「手入れ?手入れ……部屋?
なんのことです?それ。
まぁいいです、堀川さんのお手も拝借してもよろしいですか?」
首を傾げながら手を差し出す審神者さん。
これは、よくない。
「ちなみにだけど、何をするつもりですか?」
「傷を、治そうかと。」
まぁ今の状況からいって、この回答は想定の範囲内。問題はここからだ。
「何故、そうやるんですか?
もし仮に手入れをしたいだけなら、手入れ部屋があるじゃないですか。資源もそこまで枯渇してなかった筈ですし、わざわざ自分に負荷がかかるようなやり方じゃなくてもいいと思うんですけど……」
これは嫌味とかではなく、純粋な心配。
特に打刀の中でも比較的大柄な方である兼さんを手入れして、ただでさえ昨日の一件ですり減らされた霊力は更に僅かになっていた。
きっと今も、動けるギリギリの量しか残っていないんだろう。そんな中で、僕も?
さすがに無理があるだろう。
「いや、長谷部さんに伺った時、あなた方の傷は、その体や本体に直接触れ、霊力を使えば治る、という風に教わりましたので。
その……手入れ部屋?とはなんですか?」
なるほど、と思った。
恐らく長谷部さんは手入れ部屋の情報を伝え損ねたのではなく、敢えて伝えなかった。
それにより有限である彼女の霊力を消費することができる。或いは今回みたいな、彼女自身の霊力が枯渇している時なら運が良ければ行動不能になることもある。
長谷部さんは彼女に信頼を置いたわけでもなんでもない。寧ろ行動不能にして仕留める機会を今か今かと伺っていたんだ。
ちら、と兼さんの方を見ると、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
考えてることは粗方僕と同じだろう。
「おい、俺から1個助言をしといてやる。」
信用ができるか、と言われればまだ怪しいところだが、今の時点でそこまで悪い人でないことは明らか。
そんな彼女へ2日に渡って仕えていた刀剣が、彼だということに酷く恐怖を覚えた。
「長谷部、いるだろ。へし切長谷部。
アイツのことはあまり信頼しない方がいい。
アイツの言うこと全部間に受けてるとお前、いつか絶対殺られるぞ。」
「そう、言われましても……」
困ったように眉を下げる審神者さん。
まぁそりゃあそうだ。
昨日まで自分をサポートしていた刀を、信頼するなと言われる方が無理がある。
しかし、ここはしっかりと伝えておかないといけない。
「主さんが、僕達の傷を治すこと。
これは手入れ、と呼ばれるもので……
ここからが重要です。」
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朔夜(プロフ) - 無花果(Na-na )さん» こんばんは、コメントありがとうございます!率直な愛の言葉、とても心に響きました。本当に嬉しいです、ありがとうございます!今後ともお楽しみにしていただきたいのですが超ユル更新なので、寒くなる前に服は着て足も崩して下さいね笑 (2019年7月3日 0時) (レス) id: 959b48d95f (このIDを非表示/違反報告)
無花果(Na-na )(プロフ) - 好きです。(突然の告白)とっても面白いです、全裸で正座して更新待ってます(真顔) (2019年7月2日 20時) (レス) id: 0e478908d2 (このIDを非表示/違反報告)
朔夜(プロフ) - チランコス☆さん» こんにちは、コメントありがとうございます!まだ断言はできませんが、三日月さんはもしかしたら長くいたせいで人のいい部分も知ってしまったので迷っているのかもしれませんね。長谷部さんは過去に色々やらかしてるのでその辺もお楽しみに今後もよろしくお願いします! (2019年6月30日 11時) (レス) id: 959b48d95f (このIDを非表示/違反報告)
チランコス☆ - 続きが物凄く楽しみです!!!!!!!!!!!前作から見ていましたが、やはり見入ってしまいます…!!やはり審神者vs三日月(三条派)なのでしょうか!?長谷部が三日月派か審神者派かも気になります♪ (2019年6月30日 7時) (レス) id: 381a12205a (このIDを非表示/違反報告)
朔夜(プロフ) - あふるさん» 前作からのご愛読、本当にありがとうございます!私の私生活や審神者ライフが安定しないせいでこの小説も亀更新を極めているにも関わらず、長らくの応援ありがとうございます!始点と終点以外ノープランな小説なので今後も展開を楽しみにしていてください! (2019年6月15日 16時) (レス) id: 959b48d95f (このIDを非表示/違反報告)
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